畑薙ダムから光岳まで往復し聖平小屋でテント泊『南アルプス南部縦走①』【百名山三十九座目】

登山
登山百名山

南アルプスという大きな山塊には数多の名峰が存在します。しかし、それらはどこも山深い位置にあり、一つ一つ登ることは容易ではありません。甲斐駒ヶ岳や北岳などの北側は、広河原や北沢峠などバスが定期的に出ていますが、悪沢岳や聖岳などの南側は、登山口にたどり着くこと自体難儀します

そこで、南側の百名山を一気に登りたいと思い、4泊5日の山行を計画しました。基本はテント泊ですが、椹島からのアクセスは㈱東海フォレストのバスを利用したいため、千枚小屋のみ小屋泊としました。また、椹島へのバスの始発が7時30分と遅いため、下山時に利用するように光岳から登るルートにしました。

この記事では、登山口である畑薙ダムから光岳まで行き、上河内岳を経由して聖平小屋でテント泊するまでの道のりです。

・この記事は4泊5日の1日目と2日目
・畑薙ダムからスタート
・茶臼岳まではきつい登り
・茶臼岳から光岳までの稜線はアップダウンが少ないが森の中だが、所々平原があり歩きやすい
・光岳山頂は林の中で展望はない
・宿泊地は光小屋と聖平小屋でテント泊

2022年9月に行ってきた写真と登山データを掲載しています。
最新の登山道情報は自治体等でご確認ください。

ルート基本情報

行程

1日目 11時間19分 20.6㎞ 上り2,759m 下り1,164m

畑薙ダム【出発地】~横窪沢小屋~茶臼小屋~茶臼岳~易老岳~光小屋【宿泊地】

2日目 9時間22分 17.8㎞ 上り1,316m 下り1,563m
光小屋【出発地】~光岳~イザルヶ岳~仁田岳~上河内岳~聖平小屋【宿泊地】

ルート地図及び情報

下記をクリックするとYAMAP地図活動時間などの詳細な情報が見られます。

光岳〜聖岳〜赤石岳〜悪沢岳を周回【百名山三十九〜四十ニ座目】 / bataoさんの兎岳(長野県飯田市南信濃木沢)茶臼岳(長野県)南岳(長野県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

ルート詳細情報

1日目

畑薙第一ダム夏季臨時駐車場

静岡市街地からの道は離合が難しい道路ばかりで、車で約2時間かかります。さらに先に沼平ゲート前駐車場がありますが、バスの乗降場所が夏季臨時駐車場であるためここに停めます。約200台ほどの収容スペースがあります。

仮設トイレと水場はあるので、前泊は可能です。車以外ですと静岡駅などからバスがありますが、1日1便などですので、かなり不便だと思います。

初日はバスを利用せずに林道を歩いていきます。

空が赤く染まり、朝が来ることを告げられます。

畑薙第一ダムの駐車場は利用できなくなっています。そのため、登山者の駐車場は沼平ゲート前か夏季臨時駐車場のみとなっています。

畑薙第一ダムには国立公園内を登山する場合の注意点や遭難慰霊碑が設置されています。

暗いですがダムを横目に歩いていきます。

沼平ゲートに到着です。ここまで一般車両が入ってこられます。ここ以降は許可された車両か、自転車等の軽車両のみ通行可能です。実際自転車に何度か抜かされました。

謎の両生類保護看板。希少な生物でもいるのでしょうか。

林道は舗装されているところもあれば、穴だらけの未舗装路や落石もあるので、マウンテンバイクがよさそうです。

進んでいくと湖から河へと変化していきます。

大きな吊り橋が見えたら茶臼岳登山口があります。今回はここから入山します。登山届提出boxもありますが、用紙がありませんでした。

橋の名称は畑薙大吊橋で、橋の定員が15人となっているため人が渡っている場合は注意です。

橋を渡った先から登山道が始まります。ズンドコ登っていくのかと思いきや、トラバース道が続きます。道はしっかりしていますが、一人分の道幅しかないので、すれ違いや足の踏み外しが怖いところです。

場所によってはロープが設置されています。

ヤレヤレ峠です。ここは尾根伝いに登って行けそうですが、右側に下っていきます。

いったん川まで下ると1号橋が見えてきます。ここも定員が10名と定められています。

橋の先に山へ登る道があり、標高1,000mを記す看板があります。茶臼岳の標高は2,604mのため、ここから1,604mも上げていかなければなりません。

1号橋に続いて2号橋が出てきますが、ボロボロで定員も5名までとなっています。2号橋を渡ると川沿いを歩いていきます。

また川から山へ登る道が出てきます。これ以降は川を渡ることはあっても川沿いを歩いていくことはありません。

横窪沢小屋

山へと登っていく階段はかなりガタガタですが、何事もなく通ることができます。

階段を登り切った先には水場があり、チョロチョロと出ていました。

その後はトラバース道が続き、橋も渡っていきます。

するとウソッコ沢小屋が見えてきます。通年無人の小屋です。ただ、扉は締まっており中に入ることはできません

トイレもあるのですが、よく見ると下に垂れ流しするようです。

小屋を過ぎてわたる橋が2か所あり、迷いましたが右の橋を渡りました。左の小さい橋はどこへ続くのでしょうか。

渡った先には急な階段が再登場です。三段くらい続く階段で補助ロープがあります。

その後は急な登りが続き、標高を示してくれる看板も不定期で現れます。

尾根伝いの道を歩いていくと「もうすぐ中の段」の看板。

中の段は平らなスペースがあり、横窪沢小屋への中間場所でもあります。

「もうすぐ横窪沢小屋がんばれ~10分!!」という看板を目にして少し進めば横窪峠です。この辺り迷ってしまう場合が多いのかロープがあります。

横窪峠からトラバースで少し下っ橋を渡ると横窪沢小屋に到着です。営業期間が過ぎていたためか、小屋は無人となっていました。正面の扉は締まっており、側面の扉から入ることができます。

小屋の他にもテント場やトイレ、水場があり充実しています。

小屋の後も急登が続いていきます。

途中にはベンチが設置してあり、ずっと森の中で展望がなかったのですが、大無限山が見える休み場があります。ここで茶臼小屋までおおよそ

4割くらいでしょうか。

茶臼小屋

標高1,900mを超えてくると、中間地点である倒木ベンチがあります

倒木ベンチには水吞場があります。今回は少し出ていましたが、枯れているときが多いようです。

道がトラバースになってくれば、茶臼小屋までもう少しの場所です。

茶臼小屋にようやくたどり着きました。ここは食事の提供がなく、素泊り(9,000円)のみとなっています。テント泊は一人2,000円10張となっています。ともに事前予約が必要となっています。

テント場は小屋の隣にありますので、良い立地のところです。

水場やトイレも小屋の裏側にあり、飲み物は代金箱に入れるだけでokです。

休憩スペースもあるので、ここで大休憩して茶臼岳、そして光岳までの長丁場に備えます。

茶臼岳

小屋からまずは茶臼岳の山頂に向かいます。

森林限界を超え、遮るもののない場所を登りますと、光岳と聖岳の分岐点があります。まずは光岳方面に向かいます。

南側からガスが押し寄せているため、北側の斜面はガスが少ない状態です。茶臼岳までは緩やかな登りとなっています。

茶臼岳の山頂周辺は大きな岩がごろごろしている場所です。

まずは茶臼岳の山頂を踏むことができました。360度展望できる場所ですが、残念ながら真っ白です。

光岳まで距離があるのですぐさま先へ進むと、ガスが立ち込めているためかライチョウが登山道に姿を現しました。ここ最近の山行では必ずといいほど出逢っているので、目新しさがほとんどなくなっています。

光岳までの稜線は森林限界下で、展望がない林の中を進むことになります。ただ、ダケカンバや池などがあり、鬱蒼とした場所を延々と歩いていくわけではありません。

植生保護のためか木道を歩くこともあります。

仁田岳へ行く分岐の希望峰です。この日は長距離の歩きと登りのため、仁田岳へは明日行くことにし、光岳へ行くため、ここから下っていきます。

易老岳

ある程度下っていくと、アップダウンの少ない道が続きます。立ち枯れした木など神秘的な雰囲気のある場所もあります。

木々で太陽の光が届きにくいためか、足元がかなりぬかるんでいます。道の端っこや迂回するようなふみ跡があるので、避けて通ることができます。

たまに次の目的地までの時間が記された看板が設置されています。最初見たときは何の数字か分かりませんでした。

幾度かのアップダウンを過ぎて、樹林帯の中を上がっていきますと

易老岳の山頂があります。林の中の広場のような場所です。

すぐ近くには易老渡と光岳の分岐点。ここからさらに下っていきます。

林の中を進みますが、全く展望がないわけではなく、このように西側だけ展望が開けている三吉ガレなど、360度の展望箇所が道中にないだけです。

三吉平という平坦な場所があります。道が分からなくなりそうですが、ピンクテープが道標となっています。

三好平を過ぎればゴロゴロした岩を登っていきます。ここが光岳までの道で最もきつい上りです。

光小屋

登っていくと勾配が緩やかになっていき、大きな岩が減っていきます。

どこか庭園のような場所になってきました。植物は残念ながら旬が過ぎており枯れてしまっています。

いよいよ平たんな場所になると静高平になります。ここに水場がありますが、枯れていることが多いようです。今回はしっかりと水が出ていました。小屋から下ったところにも水場があるようですが、往復20分ほどかかるため、ここで汲んでいく方がよさそうです。

木道の広い場所に出ました。イザルヶ岳へ行く道がありますが、仁田岳同様明日に回します。

この時はまだイザルヶ岳が見えていました。

テント禁止の看板。ここまでくると光小屋はすぐそこです。

まずはテント場に着きます。小屋は少し上がった場所です。

やっと光小屋に着きました。定員は14名とコロナにより縮小されており、1泊2食で13,000円(ハイシーズンを除く平日は12,000円)で、テント泊は一人1,500円(ハイシーズンを除く平日は1,000円)となっています。テント泊は予約不要ですが、10張程度の収容スペースしかないので、早めに着いた方がよさそうです。

テント場は下のほかに、小屋近くにもあります。テント場は崩壊?が激しくテントの張網に石を用いずペグを打ってくださいとのこと。

小屋周辺は木々が立っていますが、水場への下降地点が最も展望の良い場所だと思います。

光小屋は8月に感染者が出たことから、感染対策強化のため使用済みトイレットペーパーはゴミ箱に捨てずに登山者の持ち帰りとなっています

光岳山頂や光石は翌日行くことにし、翌日晴れることを期待しながら就寝します。

2日目

光岳

小屋近くからモルゲンロートと富士山を見ることができました。雲行きが怪しいですが、山頂に向かいます。

柴沢吊橋との分岐を通り過ぎ

光岳山頂です。暗くて分かりにくいですが、山頂は林の中なので展望がありません。

すぐ近くに展望場所があるのですが、残念ながら曇ってしまいました。

続いて光石も見に行きます。思ったより距離があり、下っていきます。

光石です。白色の大きな岩になっており、登ることができます。こちらも雲で周囲の山を観ることが叶いませんでした。

小屋近くの展望場所に戻ってみましたが、やはりガスが高山にかかったまま。待っていても展望はなさそうなので、光岳を後にします。

イカルヶ岳

昨日スルーしたイカルヶ岳に向かいます。道はゆったりとした登りで、5分も歩けば山頂にたどり着きます。

山頂部は360度の展望ですが、今回は真っ白な景色です。光小屋からご来光を望むときは、ここまで来た方が良いかもしれません。

2日目の目的地である聖平小屋へ向かうため、昨日通った道を戻っていきます。

仁田岳

どうやら光岳から茶臼岳の稜線で雲はとどまっているのか、西側や北側は晴れています。

同じ道ではありますが、太陽が出て神秘的な場面になっているときがあります。

木々の間から兎岳。右側には聖岳が構えています。

さて、希望峰から仁田岳へ向かいます。

イザルヶ岳よりも距離が長く、ハイマツが生い茂っており歩きにくい道です。

それでも林を抜ければ開けた場所に。

アップダウンのある道ですが、傾斜は緩やかです。

仁田岳山頂です。ここも360度の展望があるはずですが、やはり真っ白。そういう運命なのでしょう。

ただ、茶臼岳へ向かうときにはしっかりと聖岳が見えていました。

茶臼岳と上河内岳の並びもギリギリ雲に侵されていないくらいです。ただ、茶臼岳山頂は到着時すでに雲の中でした。

茶臼小屋と上河内岳の分岐点に着きました。ここからは1日目に歩いていない場所を進みます。

上河内岳

まずはトラバース道を少しずつ下っていきます。そうすると、やがて林が見えてきますので、そのまま突っ込みます。

再度森林限界下に突入です。

すると窪地の平らな場所が登場です。こういった場所が多いのは南アルプス特有なのかもしれません。

やがて上河内岳が姿を現します。ここから徐々に登りへと道が変化します。

森林限界を超えた先には奇岩竹内門が見えてきます。大きな岩がポツンと生えているので目立ちます。

登山道以外でも平らな場所があり、下りることができそうな気がしてきます。

2日目の宿泊地である聖平小屋も見えてきました。

上河内岳へは奇岩を過ぎると岩の尾根を登ります。

岩の尾根を登った先が、上河内岳の肩になります。上河内岳への山頂は踏まずとも、聖平小屋へ行くことができますが、せっかくなので山頂へ向かいます。

山頂への道は程よい斜度です。往復になるので肩にザックをデポしています。

10分程度で山頂にたどり着きます。ガスが出たり消えたりしていました。

聖岳方面の雲がちょうど抜けてくれました。

茶臼方面も北側は雲がないですが、相変わらず南に雲がとどまっています。

上河内岳を後にして、宿泊地へ向かいます。あとは基本下っていくだけとなります。

聖平小屋

草木が生い茂ったところが道となっており、おいしそうな実が生っています。

途中のガレ場は見通しが良く、聖岳や兎岳を眺めることができるポイントです。

細いトラバース道を進んでいくと南岳の山頂があります。

その後もガレ場が続きます。途中から森に入っていくことになるので、ガレ場はここが最後となります。

再度森林限界下に行き、草が生い茂った道を進んでいくと

視界が開け、平らな場所が出てきます。聖平小屋はここから少し下った場所にあります。この辺りで携帯電波を拾うことができ、docomoのみ少し森の方へ行く必要があります。

聖平小屋へはまるで聖岳へ向かうような木道を進んでいきます。

森の中に入ったらすぐに聖平小屋が見えてきます。ここは茶臼小屋と同じく食事の提供がなく、素泊り9,000円、テント泊1人2,000円となっています。小屋泊だけでなく、テント泊も事前予約が必要です。

食事の提供はないですが、昼間のランチは行っています。

小屋前には水場と飲み物の販売、テント泊の許可証返却箱があります。

テント場は小屋の目の前で30張ほどのスペースがあります。また、水場も備わっています。

トイレは小屋になく、少し離れた場所にあります。山小屋では珍しい水洗式のトイレが備わっています。

夕方になると、大気が安定したのか雲のない聖岳を拝むことができました。小屋は林の中にあるので展望がないため、分岐点まで出る必要があります。

3日目以降は別の記事はこちら↓

この登山を振り返って

南アルプス南部縦走の1日目と2日目でした。この周回コースは記録が結構残っているのですが、だいたいは椹島スタートとなっています。椹島へのバスの始発が遅いのでこの計画にしましたが、荷物が多い1日目に歩きすぎたと後悔しました。実際のところ茶臼小屋でヘロヘロとなっています。

ただ、茶臼小屋まで登ればあとはそこまできつい上りもなく、アップダウンの少ない稜線を歩いていくだけになるので、ある意味ちょうど良いペース配分だったのかもしれません。他の方法としては、茶臼小屋で宿泊し、光岳ピストンでもよかったでしょう。

危ない箇所はありませんでしたが、トラバースの道は道幅が狭いので注意が必要です。森林限界の標高が南アルプスは高いため、森に入ったり出たりします。ただ鬱蒼とした木々の間を抜けるだけでなく、広々とした場所や、庭園のような場所もあるので、これが南アルプスの特徴だと思いながら歩いていました。

次の記事では、聖岳に登り、百閒洞で宿泊、赤石岳・悪沢岳を登って千枚小屋で小屋泊して椹島へ下る3日目と4日目、5日目です。ネタバレになりますが、3日目以外は天候が悪くほぼガスとなっていますが、こんな感じの道なんだなと思いながら読んでみてください。

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