柏原新道から後立山連峰の鹿島槍ヶ岳と五竜岳に登る【百名山三十七、八座目】

登山
登山百名山

黒部湖を挟んで立山連峰の後ろ側に位置する山々が、そのまんまの名称である後立山連峰。その中の難所として、八峰キレットと不帰キレットがあります。今回は鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある八峰キレットを通る縦走をしてきました

縦走ルートは大谷原からの赤岩尾根ルートが鹿島槍ヶ岳の最短ルートですが、交通機関がなくタクシーまたはマイカーになってしまうため、電車とバスで行くことができる扇沢をスタートとし、五竜ゴンドラをゴールとしました。

・スタートは扇沢、ゴールは五竜ゴンドラ
・宿泊地は冷池山荘と五竜山荘でテント泊
・車は五竜ゴンドラ駐車場に停め、電車で信濃大町駅へ、バスに乗って扇沢へ
・柏原新道は整備された歩きやすい道
・爺ヶ岳からは剱岳の美しい姿や北アルプスを一望できる
・鹿島槍ヶ岳から五竜岳までは岩場の連続

2022年8月に行ってきた写真と登山データを掲載しています。
最新の登山道情報は自治体等でご確認ください。

ルート基本情報

行程

1日目 9.6㎞ 6時間29分 上り1,582m 下り542m

扇沢【出発地】~柏原新道~種池山荘~爺ヶ岳~冷池山荘【宿泊地】

2日目 8.7㎞ 6時間44分 上り1,152m 下り1,129m

冷池山荘【出発地】~鹿島槍ヶ岳~キレット小屋~五竜岳~五竜山荘【宿泊地】

3日目 7.2㎞ 2時間51分 上り241m 下り1,192m

五竜山荘【出発地】~遠見尾根~アルプス平駅【到着地】

ルート地図及び情報

下記をクリックするとYAMAP地図活動時間などの詳細な情報が見られます。

扇沢から鹿島槍ヶ岳と五竜岳を縦走する【百名山三十七、八座目】 / bataoさんの中遠見山爺ヶ岳(長野県)白岳(長野県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

ルート詳細情報

縦走するための交通機関の下準備

今回は周回コースでないため、交通機関を使って登山口や下山口に行く必要があります。そのため、まずはマイカーを下山口の五竜ゴンドラ駅に停めます。

その後歩いて20分ほどの神城駅に行きます。切符売り場はありませんので、乗車するときに整理券を受け取り、下車した駅で清算します。下車する信濃大町駅は420円です。

信濃大町駅で下車すると、駅前に扇沢行バス乗り場と切符売り場があります。運賃は片道1,390円、往復2,500円です。これで縦走の準備は整いました。

登山口である扇沢到着時刻ですが、神城駅は始発で6時17分発、信濃大町駅6時46分着、扇沢行バスが7時10分発、扇沢駅7時50分着です。

1日目

扇沢

バスで扇沢駅に着きました。多くの人はここから黒部ダムへ行く人たちです。

少しもったいない気がしますが、バスで来た道路を戻っていきます。扇沢駅の有料駐車場を通り、

道路に出て無料の市営駐車場2つを通り過ぎていきます。

すると扇沢を渡る橋と駐車場があります。ここが今回の登山口である柏原新道登山口です。仮設トイレも設置されています。

登山口で登山計画書を記入していきます。

新型コロナのため、山小屋は完全予約制であること、テント場も指定日は予約が必要である看板が掲げられています。

登山口で早速がけ崩れのため危険な個所が。さっと通ります。

柏原新道

登山道は森の中を歩いていきます。

たまに木々の間から景色が見えます。

整備された道ですので、黄色の標識で休憩所や見どころを教えてくれます。八ツ見ベンチからは針ノ木岳やスバリ岳が見えます。

崖の上を通るため注意看板があります。特に技術が必要な場所ではありませんが、転倒すると大怪我につながる場所だと警告しています。

崖の終わりにはケルンがあります。

最初の山小屋である種池山荘が見えてきました。近いような遠いような。

一枚岩がどれを指すのか分かりませんでした。

石畳はそのまんまですね。

包優岬からは標高も上がり景色がぐんとよくなってきました。

その後も名の通り石のベンチがある石ベンチ、アザミが咲き誇るアザミ沢、

秋に輝く黄金岬などがあります。

今度はガラ場注意の場所。

崩壊している個所もありますが、道は踏み固められています。後半には鎖が設置してある個所も。

富士見坂や鉄砲坂などを登っていきます。熊注意の看板も。

種池山荘

坂を上りきると種池山荘に到着です。1泊2食で13,000円、平日割で11,900円です。素泊りは受付していません。テント泊は2,000円約30張となっています。

名称通りの池がすぐそばにあります。

山荘前には休憩スペースがあり、後立山連峰の針ノ木岳などがよく見えます。

爺ヶ岳へ向かうことになりますが、柏原新道で眺めていた新越乗越方面の稜線も歩いてみたいものです。

個々の名物としてピザがあるそうで。誘われましたがここで休憩は取らないため、爺ヶ岳へ向かいます。

爺ヶ岳

爺ヶ岳まではゆったりとした稜線を歩いていきます。

振り返ると剱岳の姿が。今まで富山側からしか見たことがなかったので、雪渓や北方稜線の険しさに改めて気づきました。種池山荘は屋根がオレンジなので目立ちます。

鹿島槍ヶ岳へ続く稜線も一目瞭然です。すごく小さいですが、冷池山荘も見えます。

爺ヶ岳の南峰に登頂しました。ほかに北峰や中峰がありますが、中峰が最高峰になります

山頂からは遠くに槍ヶ岳の姿が。どんなに遠くてもわかる形は良いですね。

次は最高峰の中峰に行きます。少し下った後に登り返していきます。

つづら折りに下っていく道ですが、ショートカットされないようにするためか、ロープで道を制限しています。

中峰は登らなくても鹿島槍ヶ岳方面へ行ける巻道があります。

最高峰の中峰山頂に到着です。背後にある剱岳が良い感じに映えています。

あとは北峰ですが、ピークは踏むことなく通り過ぎて行きます。

北側はガスにまみれていますが、冷池山荘は辛うじて飲み込まれていません。

下っていくと冷乗越に着きます。ここは大谷原登山口からの赤岩尾根との合流点です。ここからさらに下り、少し登ると冷池山荘に到着です。

冷池山荘

早速池が出迎えてくれます。

冷池山荘に到着です。コロナによる影響が大きいのか、募金箱が設置されています。種池山荘と経営者は一緒のため、料金は同額の1泊2食で13,000円、平日割で11,900円です。素泊りは受付していません。テント泊は2,000円約45張となっています。

受付時に水1リットルサービス券がもらえます。給水はスタッフが行い、給水時間は5時~19時までとなっています。また、夕食準備のため、16時~18時は給水不可です。水を購入する場合は1リットル200円です。

テント場は山荘から離れており、トイレも山荘にあるのでなるべく行く回数を減らしたいところです。広さはありますが、傾いた場所が多く、動かせない石もあるため設営場所には苦慮します。

ただ良いところもあり、開けた場所ですので剱岳や立山連峰の眺めは最高です。その分風をもろに受けるため注意が必要です。

2日目

鹿島槍ヶ岳

この日は一日天気が悪い予報ですが、午後から特に悪くなる予報なので、ナイトハイクを始めます。

暗くてわからなかったのですが、おそらく遭難碑だと思われます。

最初に見える山のシルエットは鹿島槍ヶ岳、ではなく布引山です。

明るくなって登山道の道も見えてきました。

まずは布引山の山頂に着きました。通過点ですのでそのまま通り過ぎていきます。

鹿島槍ヶ岳までの稜線。ガスって見えませんが、危ないところは特にありません。

ガスが少し抜けて幻想的な雰囲気を醸し出してくれます。

岩がゴロゴロしてくると山頂に近づいてきた証です。

鹿島槍ヶ岳の南峰山頂に登頂しました。残念ながら周囲は真っ白です。ここまでの道は危険個所もなく、急坂を登ることもありません。

鹿島槍ヶ岳は双耳峰のため、先に北峰があります。そこまでの道は吊尾根と呼ばれ、岩場になってきます。ここからが広義の八峰キレットであり、ポールは片づけて、ヘルメットの着用を推奨します。

岩場を渡っていきます。岩に目印があるので、ルートはそれを追っていきます。

北峰は通らなくても良い場所ですが、せっかくなので登っていきます。

北峰へ行く途中にライチョウが1羽。天気の悪い日に登っているためか、毎回登山で逢っている気がします。

北峰の山頂に到着です。距離は短いですが、ザックを分岐点でデポしたため早く着くことができました。

北峰から下りて登山道のすぐのところに、先ほどのライチョウとは別の個体が。3羽いたため最初に見たライチョウと同じグループかもしれません。

段々と落ちていきます。道も狭いので、すれ違う際は場所に注意が必要です。

岩場の難所ですので、当然ながら鎖が設置してある個所も。無理に使う必要のないところもあります。

時折雲が抜けてくれてありがたいですが、すぐにガスの中に消えてしまいます。

八峰キレット最大の難所と言われている場所に到着です。狭義ではここが八峰キレットとも言われています。はしごや鎖が設置してあります。

岩と岩の細い道。左側にはあまり落ちたくありません。

難所を通過した後です。左側は崖となっています。常時鎖があるので話さずに通行します。

これで終わりかと思いきや、鎖場は続きます。

五竜岳方面の雲が少し晴れました。山頂まではさすがに見えませんが、長い稜線が伸びています。

キレット小屋

この岩場を通過すると、

眼下にいきなりキレット小屋が現れます。キレットの鞍部に建てられていますが、このような場所に建てること自体が驚きです。

宿泊は完全予約制となっており、1泊2食で13,000円、素泊り9,500円です。水はペットボトルのみとなっています。もちろんテント場はありません。

小屋の前にはイスとテーブルがあります。前の突き出したところは立ち入り禁止の場所です。

さて、これからは五竜岳に向かって登っていきます。核心部を通りましたが、相変わらず岩場が続きます。

五竜岳

キレット小屋から少し進んだ梯子には、小屋があと少しの看板が。

ガッチリした岩だけでなく、浮石だらけの場所を進むことがあるので、足場を慎重に選びながら歩いていきます。

今まで以上に鎖の設置個所が多く、危険であることがうかがえます。

登りだけでなく、下りも相当あり、アップダウンが続くため体力が必要です。

途中テントを設営できそうな場所があると思ったら、テント禁止と書かれていました。

北尾根の頭に着きました。少し広いスペースがあるので休憩場所にもってこいです。ここでキレット小屋から五竜岳までの道のりの半分くらいでしょうか。標高はキレット小屋から100m程度しか上げていません。

ここからも梯子や鎖場があります。

五竜岳に近づくにつれ岩が険しくなっていきます。その分標高も上げていきます。

鎖が設置してあるので、無茶苦茶危ない場所はありません。

難所のG5です。ここも鎖が設置してあります。

また、ロープで道を分かりやすくしています。

岩場だけでなく稜線を歩いている時間もありますが…

また岩場に戻ります。

やっと山頂に近づいてきました。ザレ場を登っていきます。

ここが山頂と思ったのですが、少し先に山頂があります。ここは五竜山荘との分岐点です。

八峰キレットは岩場の連続した長丁場の道ですので、上級コースとなっています。

分岐点から山頂までの道のり。距離は短いのですぐにたどり着きます。

五竜岳の山頂を踏むことができました。変わらず景色は真っ白ですが。

余韻に浸ることもなく、五竜山荘を目指します。先ほどの分岐点から下っていきます。

五竜山荘

岩場や鎖場が終わったのかと思えば、まだまだ続いていきます。

遭難者慰霊のケルンがあります。20代半ばと大分若い年齢です。

黙々と下っていけば雲の中から五竜山荘が見えてきました。

五竜山荘は収容人数250人と多く、1泊2食で13,000円、素泊り9,500円の完全予約制です。

中の売店は多くの商品があり、山のtシャツとして有名な商品は在庫がかなりありました。

テント場は山荘の目の前にあるため好立地ですが、今は完全予約制で、幕営料で1,000円、1人2,000円と最低3,000円かかります

外トイレは山荘の奥にあり、男女共通の汲み取り式となっています。

水は有料で、500mℓで100円ですが、消毒済みの水ながら煮沸推奨となっています。

テント場の正面には餓鬼山や右手には唐松岳が鎮座しています。

お昼ごろはお間が降っていましたが、夕方には雲もある程度晴れて形式を眺めることができました。

3日目

雲が出ていましたが、綺麗な日の出を拝むことができました。

五竜岳も山頂に少し雲がかかっていますが、朝焼けに染まっている姿が見れました。

遠見尾根

テントを片付けて山荘脇から遠見尾根を通って下山します。

まっすぐ行くと唐松岳への稜線になります。この道もいつか通ってみたいものですが、今回は下山です。

2日目の五竜岳山頂にいるときもこのくらい晴れてくれれば…

遠見尾根は白岳を通過するのですが、何故か猿の群れが山頂付近にたむろしています。

猿の群れに突っ込む形で白岳の山頂に着きました。特に襲ってくる気配はありません。

遠見尾根も岩場があります。

鎖付きの岩場が何か所かあります。濡れていると滑るので、厄介な場所です。

下り一辺倒ではなく、上りもあるので、標高があまり下がらず、ダラダラした道です。

西遠見につきました。この時ちょうど雲が抜けて、五竜岳の姿やそこから延びる稜線が確認できます。

薄っすらとですが虹も確認できました。

尾根道は狭く、笹薮が生い茂っています。朝霜や雨で濡れているので、服や靴が濡れてテンションが下がる道です。

大遠見中遠見と過ぎていきます。

小遠見へ行く分岐点です。ここからはある程度笹薮が刈り取られているので助かります。

小遠見はベンチもあり休憩場所となっています。ここまでは白馬五竜高山植物園のトレッキングコースとなっています。

尾根を歩いていくことに変わりないですが、笹薮から逃れることができたのは非常にうれしい限りです。

二ノ背、一ノ背髪を通り過ぎていきます。景色が素晴らしい場所だとは思うのですが、残念ながら真っ白です。

道は木道などがありとても整備されていて歩きやすくなっています。

見返り坂を通り過ぎ、地蔵ケルンとの分岐です。今回は地蔵ケルン経由で下ります。

アルプス平駅

植物園に近づいてきたのか、植物の説明看板が出現してきました。ケルンのような建造物も目に入ります。

慰霊碑が多く集まっている場所です。

地蔵の頭は少し広いスペースになっています。

展望台によくあるパノラマ展望図です。真っ白です。

ケルンは恐らく遭難慰霊のためでしょう。中には浄財箱と鐘があります。

途中リフトがあり、アルプス平駅まで通じているので、ショートカットや疲れた人にはお勧めです。ただ、悪天候の場合は乗車中遮る壁や屋根がないため注意が必要です。

高山植物園に着きました。時期は過ぎており、職員が新たに植物を植えていました。

ゴール地点のアルプス平駅に到着です。ここからゴンドラに乗車し、先日マイカーを停めた駐車場まで一気に行くことができます。

ゴンドラ片道券は1,300円です。また、おしぼりも付いてきます。降り口におしぼりを入れる箱が用意されています。

最初のうちは真っ白でしたが、次第に雲を抜け町並みが見えてきました。

そして下界のとおみ駅に到着して今回の山行は終わりです。

この登山を振り返って

縦走登山をするときは、マイカーが主なアクセス方法のため、折立の時のようにスタート&ゴールは同じに設定します。ただ、どうしてもできない場所は交通機関の整った登山口になります。タクシーを利用すると高くつきますから。

登山としてはかなりまったりした行程を組みました。前回の折立周回は自分にとってハードすぎて、体が悲鳴を上げてしまったので。爺ヶ岳からの主に剱岳の眺めは感動しました。険しさと美しさを兼ね備えた山だと改めて認識したところです。2日目がメインでしたが、雨に降られて視界はゼロに近い状態だったことだけが心残りです。夕方以降は雲が晴れてきたので、それだけでも歩いた甲斐がありました。

危ない箇所は八峰キレットくらいなルートなので、登山経験者であれば問題ないと思います。マイカーがなくとも、公共交通機関で事足りるルート構成なので、都会の人も歩きやすいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました