折立から薬師岳の稜線を渡り奥黒部ヒュッテへ行く『北アルプス奥地縦走①』【百名山三十三座目】

登山
登山百名山

北アルプスの北側は立山、南側は上高地と山へのアクセスが整備されています。では、真ん中に位置する水晶岳などの山々へはどのようにして登ろうかと考えたところ、有峰林道の先にある折立から登る計画を立てました。以前、折立から雲ノ平を経由して縦走したことがあるので、今回は噂の読売新道を通る周回コースを縦走する3泊4日の行程です。

この記事では、登山口である折立から薬師岳を経由し、その先のスゴ乗越でテント泊、五色ヶ原から下り奥黒部ヒュッテまでの道のりです。

・この記事は3泊4日の1日目と2日目
・折立からスタート
・太郎平まで上がれば北アルプスの盟主たちが一望できる
・薬師岳からの稜線は岩がゴロゴロ
・スゴ乗越から越中沢岳までは急な斜面のアップダウン
・平ノ渡場から奥黒部ヒュッテまでの道は木製の梯子が連続し、アップダウンが激しい
・宿泊地はスゴ乗越小屋と奥黒部ヒュッテでテント泊

2022年8月に行ってきた写真と登山データを掲載しています。
最新の登山道情報は自治体等でご確認ください。

ルート基本情報

行程

1日目 10時間29分 16.0㎞ 上り1,840m 下り925m

折立【出発地】~太郎平~薬師岳~北薬師岳~スゴ乗越小屋【宿泊地】

2日目 10時間9分 18.0㎞ 上り1,622m 下り2,391m
スゴ乗越小屋【出発地】~越中沢岳~五色ヶ原~平ノ渡場~奥黒部ヒュッテ【宿泊地】

ルート地図及び情報

下記をクリックするとYAMAP地図活動時間などの詳細な情報が見られます。

折立〜スゴ乗越〜奥黒部ヒュッテ〜読売新道〜三俣山荘〜西銀座ダイヤモンド〜折立【百名山三十三〜六】 / bataoさんの越中沢岳北ノ俣岳(上ノ岳)赤牛岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

ルート詳細情報

1日目

折立

有料道路の有峰林道に登山口である折立があります。有峰林道は開通時間が6時~18時までとなっており、それ以外の時間で通行はできません。そのため、連休にはゲート前に車の列が形成されることがあります。通行料金は普通自動車で2,000円です。

折立にはキャンプ場があり、ここで前泊することができます。料金は無料ですが、山の奥地にあるため熊の目撃情報があります。そのため、キャンプ場の敷地に沿って電気柵が張られています。炊事場やトイレなど必要な設備は揃っています。

キャンプ場すぐそばには登山口があり、登山計画書については太郎平小屋で提出することになっています。

登山口のすぐそばには慰霊碑があります。愛知大学の薬師岳遭難事故にまつわる十三重の塔です。

登山口すぐは太郎坂と呼ばれ、急坂と言われることがありますが、そこまで急ではなく、段差が大きな場所がいくつかあるくらいです。

途中アラレちゃん展望所という某鳥山さんのキャラクターが張ってあったのですが、どこにも張っていませんでした。このご時世著作権的なことでもあったのでしょうか。

三角点からは視界が良くなり、今日歩く稜線がよく見えます。ベンチは点々とありますので、適宜休憩できます。

カラフルなポール。どうも積雪深計測ポールのようです。

太郎平まではダラダラと登っていく道で、斜度はありませんが距離が長いです。

太郎平

太郎平には太郎平小屋があり、ベンチやテーブルが多くあります。山岳警備の派出所も兼ねているため、こちらで登山届を提出します。トイレや水場もあるため、ここで多くの方が休憩しています。

中部山岳国立公園の標識とともに、北アルプスの山たちが姿を現します。ここからは黒部五郎岳や三俣蓮華岳、鷲羽岳に水晶岳と百名山などで有名な山が見えます。また、正面の台地は秘境と呼ばれる雲ノ平です。

今回は折立から日帰り登山が多い薬師岳に向かいます。

木道を歩いて少し下っていくと太郎平キャンプ場に到着です。ここの受付は太郎平小屋か、時期によってはキャンプ場で受付となる場合があるため、注意が必要です。1人1,000円と、他のテント場に比べて割安の価格です(他は大体2,000円)。また、ご丁寧に他のテント場の予約が必要な期間も掲載されています。ここでも水場とトイレがあります。

薬師岳

太郎平キャンプ場を過ぎれば薬師岳への登山道に入ります。初っ端から沢沿いの急登です。長くはありませんが道が狭い区間です。

急登が終わりゴロゴロした岩場を歩いていくと、開けた広場の薬師平になります。

薬師平を過ぎると、以後は遮るものがなくなる開放的な道となります。

そのためどこを見ても山しか見えません。天気が良ければ槍ヶ岳も見えますが、今回は雲に隠れています。

尾根を歩いていきますが、道は広く勾配もちょうど良いくらいです。

途中には薬師岳山荘があります。テント泊はできませんので、小屋迫のみとなります。1泊2食で13,000円、素泊まり9,000円です。なお、自炊室がないので、外のベンチやベランダで自炊することになります。

山荘から一登りすると石室の避難小屋跡とケルンの慰霊碑があります。慰霊碑は登山口にあった遭難碑と同じ事故を指しています。愛知大学は吹雪の中、この地点から東南稜に迷い込み遭難しました。

避難小屋跡から山頂までもう少しですが、雄大なカールを横に見ることができます。

薬師岳山頂は雲が出てきて少し遅い時間ですが、多くの人がいました。祠が置いてあり、山名のとおり薬師如来像が祀られています。

標高2,926mまで登ってきましたが、ここからさらに稜線を歩き、スゴ乗越小屋まで下っていきます。

薬師岳山頂から先は今までの道と打って変わって、細い道になり、ヘルメットを装着している人もいました。

薬師岳山頂からのアップダウンを超えると北薬師岳に着きます。この時点で周囲は真っ白で何も見えませんでした。

北薬師岳からは下っていくだけですが、岩が多くあり、視界が悪い時には道に迷うかもしれないので、目印を頼りに進みます。

下りの斜面は比較的緩やかな場所が多く感じました。

ピークの一つである間山ですが、特段の上りもなく、山頂であることを感じさせません。

スゴ乗越小屋

間山を過ぎると、勾配が強い場所になり、スゴ乗越小屋に近づいてきた証拠です。

再び勾配が緩やかな道が続きます。水が流れにくいのか、水たまりが所々できており、飛び石で避けていきます。

ようやくスゴ乗越小屋に到着です。小屋泊は1泊2食12,000円、素泊まり7,000円で、収容人数は40人の完全予約制です。テント泊は1,000円となっており、太郎平キャンプ場と同額なので、太郎平小屋グループとして料金を統一しているのでしょうか。

水は100円/㍑、トイレは1回100円です。

テント場は少し下ったところに有り、明日通る稜線であるスゴノ頭越中沢岳がよく見えます。平日であり、正直人気のないテント場かと思いきや、この日は10張ほどのテントが設営されていました。逆に小屋泊は1人のみだっととのこと。

小屋の前からも良い景色が拝めます。明後日登る読売新道から赤牛岳までの稜線が正面に構えています。

2日目

越中沢岳

平ノ渡場の船の運航時間が決まっているため、ナイトハイクでスタートです。テント場に五色ヶ原行の看板があるのでそこから登山道が始まります。まずはスゴ乗越まで下っていきます。

夜だと街の灯りが目立って見えます。

崩落個所に補助ロープが設置されています。足場が砂で道は作られていますが、念のためロープを持ってわたります。

スゴ乗越は写真にありませんが、少し広めの場所となります。ここからスゴノ頭まで急登になります。

スゴノ頭近くまでくると、ゴロゴロした岩を登っていく箇所があります。

スゴノ頭に到着した頃には夜が明け、今まで通ってきた道の全貌が分かるようになりました。スゴ乗越小屋の標高はすでに追い抜いた場所にいます。

正確にはスゴノ頭は植生保護のため足を踏み入れることができません

スゴノ頭で日の出を迎えそうですが、雲行きが怪しく、時間的余裕があまりなかったので次の越中沢岳に進みます。まずは一旦下り、上り返します。

この上りもなかなかの急登。ロープが設置されている個所もあります。

チングルマの綿毛がわきにあるゆったりとした道になってくると、山頂はすぐそこです。

越中沢岳の山頂に着きました。相変わらずガスに包まれていますが、本来であれば北アルプスの雄大な景色を望めたことでしょう。

山頂からしばらくは広く緩やかな場所です。視界が悪いと迷いそうですので、目印を見失わずに進んでいきます。

五色ヶ原

徐々に標高を下げていきます。

やたら片側だけ飛び出ているハイマツ帯が出現します。近くにはトリカブトが咲いており、この辺りが鞍部の越中沢乗越となるので、ここから先は上りです。

急な登りは特にありません。程よい感じで登ることができます。

途中登山道できれいな糞を発見しました。果たしてこの糞はすれ違った登山者か、それとも…

そんなこんなで鳶山山頂です。ここから五色ヶ原まではゆったりした下りです。

ほとんど木道を歩くことになり、チングルマの綿毛が多く咲いています。

時期が良ければ多くの高山植物が咲き誇っていた場所でしょう。そして地味に山荘まで距離があります。

五色ヶ原山荘に到着です。が、この時は従業員にコロナが発生したため休業中でした。1泊2食で12,000円、素泊まり9,000円の収容人数はコロナによる影響で70人となっています。テント泊は1,000円となっています。

山荘も営業していないので、キャンプ場に向かいます。少し離れており、10分ほどかかります。

木道を歩きながら、高山植物満開の時期で晴れていたら最高の場所だなあと想像しながら歩いていると、ちょうど雲の隙間から山並みが顔を出しました。黒部湖を挟んでいるので、針ノ木岳あたりでしょうか。もう展望はないと思っていたのでうれしい誤算です。

キャンプ場は50張ほど張れる広さで、この辺りも高山植物が咲いています。

水場もありますが、沢水のため要煮沸とのこと

水分補給と休憩を済ませて、次は平ノ渡場へ下っていきます。時間は余裕そうなので、ほっとしました。

平ノ渡場

最初のうちは五色ヶ原の楽園にいるかのような道を歩いていきます。

が、標高を下げるため、次第に木々が生い茂ってきます。

登山道からはちょこちょこと目的地である黒部湖が顔を出します。

この道は尾根伝いの道で、そこそこ勾配があり段差が大きい箇所もあるため、あまり歩きやすい道ではありませんでした。

山奥には似合わない建造物が出現します。関西電力の測水施設でした。この辺りまでくると刈安峠まであと少しとなります。

標識が痛んでいて読みずらいですが、刈安峠に着きました。これといって特徴のある場所ではないのですが、ここから進む方向が変わります。

道は狭いですが、つづら折りで勾配はそこまで感じません。また、足場が落ち葉で構成されているため、柔らかく足腰に良いのは助かります。

あまり人が通らないからか、倒木が横たわっています。

ある程度下っていくと、川が見えてきます。これ以後は川に沿って歩いていくことになり、多少のアップダウンがあるくらいで、標高を極端に上げ下げすることはなくなります。

川が黒部湖に行き着きます。平ノ渡場まで近くなってきた証です。

ここにも倒木が。一瞬ハイヒールの形に見えました。

平ノ渡場近くの平乃小屋に着きました。小屋迫はできますがテント場はありません。

ここでは平の渡しの情報や、近辺の登山道情報を聞くことができます。近日の大雨により、黒部ダムへ向かう登山道にある橋が、川の流れが変わり渡渉が必要になったとのこと。舟の時間は6時、10時、12時、17時(10月以降は16時)で、7月から9月までは14時発の増便があります

この舟はダムができる前に奥黒部へ行く橋がありましたが、水没したため関西電力が無償で行っています。

平ノ渡場は小屋から少し下った場所にあります。時間になるまでは舟に乗ることができません。

ライフジャケットを装着して舟が出航します。といっても、対岸まではすぐに到着しますが。

対岸に到着です。舟までの上り下りは木製の階段となっています。

通行注意看板が登った先に掲示されています。下ノ廊下の水平歩道ほどではないですが、ある程度危険な道であるということを警告しています。

奥黒部ヒュッテ

注意看板の通り、崖のような場所に無理やり道を作っています。

今にも崩れそうな感じを醸し出していますが、案外丈夫です。最初のうちは木製の梯子を渡ることも多くなく、水平気味の道を歩いていくだけです。

ただ、湖から川に変わっていくくらいから、アップダウンが激しくなります

勾配が強い道が出てきます。

写真だとわかりにくいですが、階段というより梯子になり、一歩一歩足取りが重くなっていきます。

梯子がない崩落しそうな場所を通過することもあります。足場が砂状のため、非常に不安定です。この場所は、滑落しても10m程度で川の岸に落ちるだけなので、その点は安心?です。

土石流などで橋が崩壊しているところも。足場は作られているので通ることは可能です。

激しいアップダウンが終わると、今度は森の中を水平に進んでいきます。

川を渡る橋が姿を現します。この辺りの連続する橋を渡りきると奥黒部ヒュッテに到着です。

まずはテント場にたどり着きます。砂地の場所と草地の場所に分かれています。標高は1,500m程度のため、展望はありませんが、黒部川が近くを流れている静かな場所です。

少し登った先に奥黒部ヒュッテがあります。森の中に佇む建物で、雰囲気にあっています。1泊2食で10,500円、素泊り7,200円と比較的リーズナブルです。テント泊は1,500円となっています。ここはお風呂があり、テント泊の場合も料金を支払えば入浴可能です

トイレに行く場合は土足現金のため、中にあるスリッパを履いていきます。

トイレはきれいで水洗です。また、流し台の水は飲水可能で、この場所以外にも外に飲み水があります。

今まで来た天気が嘘かのように15時以降は晴れ間が広がっていました。さて、明日は長い道のりである読売新道を登っていくことになります。

続きは別の記事で紹介します。

この登山を振り返って

折立から周回コースの1日目と2日目でした。今まで通ったことのない道で、人が少なそうな道を選択したつもりです。折立から薬師岳まではメジャーな登山道のため、人はいましたが、さすがにそれ以降は人と会うこと自体がほとんどありません。特に越中沢岳以降で次の登山者に逢うのは、奥黒部ヒュッテでテントを張っていた方です。

危険な個所は全体的にありませんでしたが、印象が強かったのはやはり平ノ渡場から奥黒部ヒュッテまでの道です。水平歩道を歩いたことはありませんが、その雰囲気の一端を味わうことができたと思います。

次の記事では、読売新道から三俣山荘、西銀座ダイヤモンドコースを歩く3日目と4日目です。天気が優れないときでしたが、しんどい読売新道や、時折晴れ間も覗いた北アルプスの山行なので読んでみてください。

3日目と4日目の記事はこちら↓

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