日本一の高さを誇る山といえば標高3,776mの富士山ですが、2番目に高い山はというと、3,193mの北岳です。そこから南への縦走路にある間ノ岳・農鳥岳と合わせて白峰三山と言われています。3座とも3,000mを超える山で、縦走路として有名です。今回は広河原からスタートし大門沢から奈良田へ下りる行程で縦走してきました。
・スタートは広河原、ゴールは奈良田
・宿泊地は農鳥小屋でテント泊
・車は奈良田駐車場に停め、バスに乗って広河原へ
・よく歩かれるコースなためか、全体的に整備されている
・大門沢下降点から川が見えるまでは急登
・農鳥小屋は間ノ岳と農鳥岳の鞍部で甲府市の夜景が見える
ルート基本情報
行程
1日目 12.2㎞ 7時間46分 上り2,182m 下り921m
広河原【出発地】~白根御池小屋~北岳肩ノ小屋~北岳~北岳山荘~間ノ岳~農鳥小屋【宿泊地】
2日目 16.2㎞ 7時間32分 上り874m 下り2,855m
農鳥小屋【出発地】~農鳥岳~大門沢~奈良田駐車場【到着地】
ルート地図及び情報
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白根三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)を縦走する【百名山四十三、四】 / bataoさんの間ノ岳・北岳・農鳥岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
ルート詳細情報
1日目
広河原
広河原へはマイカー規制があり、南アルプス市の芦安駐車場、もしくは早川町の奈良田駐車場のどちらかから広河原行のバスに乗車する必要があります。
車でのアクセスでは芦安駐車場の方がアクセスが良いですが、今回は農鳥岳から大門沢を下り奈良田へ行くので、奈良田駐車場からバスに乗ります。
奈良田第一駐車場は無料で、砂利敷きではありますが仮設トイレと生水(要煮沸)が設置されています。
他の駐車場は奈良田バス待合所近くの第2駐車場です。こちらの方が早くバスに乗れるように思いますが、第一駐車場近くのバス停が始発です。
また、第1と第2の間に駐車スペースがありますが、落石の危険性があるため駐車禁止の看板が掲示されています。ただ、繁忙期には駐車スペースが足りなくなるため、こちらにも駐車されている車があります。
バス停はトンネル側に50m歩いた先にあります。奈良田温泉側のバス停は、2つ目のバス停となり、トンネル側のバス停で満車の場合は乗れないことになるので注意が必要です。30分前くらいには乗車できるので、早めの乗車がポイントです。
バスの片道料金は運賃1,100円+協力金300円=1,400円です。休日のためバスは満車で、立っている人が出ていました。
1時間ほどで広河原に到着です。目の前にはインフォメーションセンターがあり、2階で登山届を提出できます。
2階から出ると今上天皇徳仁の登山記念碑とバックにはすで北岳の山頂が見えます。
少しばかりの林道歩きです。さらに北岳がよく見えるようになります。
林道を歩いてすぐ、北岳へ行くため川を渡る吊り橋が出現します。
川を渡った先には今年リニューアルしたばかりの広河原山荘があります。ルート上にはないのでスルーしていきます。
まずは白根御池目指して森の中を進んでいきます。大樺沢ルートは通行止めとなっています。
白根御池小屋
さすがに人気のルートだけあり、登山道は整備されており、傾斜も急でも揺るやかでもないちょうど良い感じです。時折木製の階段が登場し、そこは足に負担がかかります。
木々の間から時折北岳をチラ見することができます。
平らな個所がいくつか点在し、休憩場所となっています。
傾斜が緩やかなトラバースになってくると土砂が流れてきた場所がありますが、道は作られているので簡単に渡れます。
トラバースの道では鳳凰三山を眺めることができるほど視界が開けます。
その後すぐに白根御池小屋に到着します。定員は51名で1泊2食10,500円、素泊り7,200円です。テント場は80張で1人1,000円となっています。また、新型コロナにより小屋泊、テント泊ともに予約制となっています。
小屋の隣には名の通り白根御池があります。年中枯れることのない池で
、水の神様が住んでいるといわれています。干ばつ時には池に馬などの骨を投げて雨乞いをしたとか。
ここから北岳へは道が分かれます。北岳肩ノ小屋を通りたいので、草スベリと言われるコースで山頂に向かいます。
北岳肩ノ小屋
最初は生い茂る草の中を。時期が良ければ花が咲いているのでしょうか。
少し高度を上げれば鳳凰三山と白根御池のコラボレーション。
道はジグザグに登っていくので傾斜はまだきつくありません。
が、ジグザグ道が終わるとむき出しの岩や木製の梯子があったりと急な道が続きます。
シカの食害から植物を守るための策が見えてくれば坂もひと段落します。
再度分岐点。白根御池から分かれていた別のルートへの道です。
肩ノ小屋ルートを歩いていくと小太郎山へ行く道との分岐点があります。
この辺りまでくれば視界がかなり開けて、甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳がきれいに見ることができるようになります。
その後の道は一部岩場を除いて歩きやすい道となっています。
まずはテント場へ先に着きます。小屋からは少しだけ離れた位置になります。
北岳肩ノ小屋にたどり着きました。定員は70名で1泊2食10,000円、素泊り7,000円となっています。テント場は50張程度で1人1,000円です。
小屋の脇から北岳山頂に向かう道があります。山頂へは40分ほどと、肩だけあって目と鼻の先です。
北岳
最初は砂利や石の道です。ジグザグ気味の道なので登りやすく整備されています。
両俣小屋との分岐点は少し広く中央アルプス方面を眺めることができます。
両俣小屋分岐からは岩稜帯となり、岩の上を歩いていきます。
あとは稜線を歩いて山頂に着きます。残念ながら東側はガスに飲まれてしまいました。
北岳の山頂です。奥の仙丈ケ岳は何とかガスに飲まれず持ちこたえています。山頂は人が多少いても問題ないスペースがあります。
農鳥小屋まで行くため、山頂から北岳山荘に向かって伸びる吊尾根を進んでいきます。
間ノ岳
稜線を進むと北岳山荘が見えてきました。
ザレ気味の道ですが、危険な場所はありません。
途中には八本歯のコルに向かう分岐点。北岳山荘からはギザギザした尾根であることがよく分かります。
木製の階段があり、道が整備されていることが分かります。
振り返って北岳と仙丈ヶ岳。上は雲ですが山容がよく分かります。
間ノ岳と農鳥岳はガスに飲み込まれる寸前といったところでしょうか。
北岳山荘に到着です。奥には雲で見えにくいですが富士山の姿が。令和4年度は改修工事のため、小屋泊は営業しておらず、テント泊のみとなっています。テント場は40張で1人1,100円になっています。
売店は営業しています。トイレは今までにない近代的なものとなっていました。ランプで使用中かどうか判別でき、使用回数も表示されているバイオトイレです。
間ノ岳へ向かいますが、まずは中白峰山。山頂までは歩きやすい稜線です。
中白峰山の山頂に到着しましたが、辺りはすっかり真っ白に。
間ノ岳までの稜線もガスに覆われてしまっています。
アップダウンは少ない道ですが、岩稜帯を進むことがあります。また、標柱のようなものが時々見受けられます。
山頂へ近づいてくると傾斜が緩やかな道になります。
間ノ岳の山頂ですが、やはりガスの中。なので早々に農鳥小屋へ向かいます。
農鳥小屋
農鳥小屋へ下り始めると、6羽のライチョウが登山道で砂浴びをしていました。何故か同じ場所で砂浴びをしているので、集合写真を撮れました。
農鳥小屋への道は分かりずらいのか、たびたびペイントでノウトリ
と書かれています。
急坂ではないのですが、岩稜帯やザレた道など歩くときに気を使います。
三国平への分岐。農鳥小屋が近くなってきました。
まずは少し離れたテント場に到着。石でテントサイトが形成されています。
少し登れば農鳥小屋です。収容人数は100人で1泊2食9,000円、素泊り5,500円、テント場は50張程度で1,000円または人数×500円となっています。
有名な管理人がいらっしゃいますが、応対は案外普通でした。
トイレは…下に垂れ流しなのでしょうか。国立公園では珍しいタイプです。
テントサイトは小屋の近くにもあり、テント場は全部合わせるとかなりのスペースになると思われます。
水場への道はテント場から。往復20分ほどかかる下った場所にあります。
道はジグザグで、森林限界下に入っていきます。水はじゃぶじゃぶ出ていました。
農鳥小屋は稜線上にあるため非常に展望に優れています。テントサイト側は甲府市の街並みや富士山。
雲も晴れてきて間ノ岳の姿をとらえることができました。
翌日登る農鳥岳も全貌が露わになっていました。
2日目
農鳥岳
モルゲンロートがきれいに見れそうな早朝です。西農鳥岳の方が農鳥岳より少しばかり高いので、そこで日の出を拝むことにします。
登っていくと日の出前のきれいな色に染まり始めました。
西農鳥岳山頂に着きました。ここで日の出まで待機します。
雲がありますが、良い演出になっています。
間ノ岳方面も見えてきました。
農鳥岳越しの富士山。ある程度日が登ってきたので農鳥岳へ向かいます。
農鳥岳までは岩稜帯の道ですが、険しいところはありません。
南アルプス南部の塩見岳や荒川三山などにも日が当たり始めました。
農鳥岳の山頂に着いた頃には空が青くなっていました。富士山がより大きく感じます。
北岳や間ノ岳もコントラストで美しい山容になっています。
白峰三山を制覇したので、あとは奈良田へ大門沢から下るだけです。
この稜線の尾根を歩いていくのかと思いきや
東側へ下って凹状部を歩くことになります。穏やかな道が続いています。
正面のピークは広河内岳です。あそこまではいかずに手前の分岐から下ります。
大門沢へ下る分岐点です。黄色の標識と鐘が目印です。
それでは富士山に向かって下ります。
大門沢
最初からロープがありますが、そこまで急な坂ではありません。
すぐに森林限界下となります。道はつづら折りをのため、まだ急な坂ではありません。
ただ、ゴロゴロした岩が出てくると、傾斜が急になってきます。
岩の道が終わって樹林帯に入っても、急坂は終わりません。
時折標高を知らせる標識が設置してあります。
川が見えてくれば急坂も終わりです。
この辺りが最後の富士山ビューポイントとなります。
小川を複数個所渡ります。渡渉というほど深い場所はありません。
広い森の中を進んでいくと
大門沢小屋が出てきます。
定員は45名で1泊2食9,000円、素泊り7,000円です。テント場は40張程度で1人1,000円となっています。小屋泊は予約制ですが、テント泊は予約不要です。水源豊富なため、温水のシャワーがありますが、コロナのため利用できないようです。
小屋からは川沿いを歩いていくことになります。
初っ端から橋を渡ります。ロープはありますが手すりはないので気を付ける必要があります。
鉄管で作られて道も。
橋である丸太が折れてしまっているところも。増水すれば流されてしまいそうです。
登山道が小川になっているところもあります。
標高を下げていくと川から離れていき、広い森の中やトラバースする道が出てきます。
危険な個所はロープがありますが、あまり頼りにならなさそうな代物です。急坂をジグザグに下るところもあります。
最初で最後の渡渉地点。橋がないので飛び石で渡ります。
発電所へ通じる吊り橋。思ったより揺れて、足元も老朽化していてビビります。
道なりに進んでいけばバリケードが設置されたコンクリート製の橋が現れます。隙間があるのでそこから橋を渡ります。
しっかりとした造りの吊り橋を渡って少し森を歩けば
登山道が終わり、林道を奈良田までひたすら歩いていきます。
道中には休憩所があり、日陰で休息をとることができます。
あとはひたすら林道を進んでいくと、ゲートにたどり着きます。ここまでは一般車両が入ってこれるようですが、駐車スペースはせいぜい5台程度です。
奈良田
バス停がありますが、1日数本しかないので奈良田まで歩いていきます。
大型ダンプが細い林道を通ってくるため、配置されている警備員が道路の左か右を歩くように誘導してくれます。
そのままひたすら歩いて奈良田第一駐車場に到着して今回の山行は終わりです。
この登山を振り返って
標高3,000mを超える縦走路でしたが、南アルプスの山はなだらかな地形のため歩きやすい稜線でした。危険個所はほとんどありません。急登は大門沢ルートの標高2,650mから2,150mまででしょうか。奈良田から農鳥岳は標高差2,000m以上の道のりのため、序盤は体力を残しておいた方がよいでしょう。
本当は奈良田から登り広河原をゴールとした方が、急坂を下ることがない分足の負担的には良いと思うのですが、奈良田から広河原のバスは便数が少なく、中途半端な時間しかないので広河原からスタートしました。さすがに広河原発が7時か14時30分しかないのは時間を持て余してしまうので。
この縦走路には山小屋がいくつもあり、北アルプスに比べると危険個所も少ないので、標高3,000mからの景色を眺めるには絶好の縦走路です。富士山はもちろん、中央アルプスや鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳や塩見岳などを眺望できるルートです。標高3,000mの山々を縦走したいけど、危険な場所は避けたい場合にお勧めな縦走路です。
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