厳冬期登山の寝袋の選び方!夏や秋に購入するべし

シュラフ
シュラフ道具

山で宿泊する上で大事な道具はというと、寝袋だと思っています(厳密には睡眠時の気温に関わるものとして、スリーピングマットやテントもありますが)。二日以上行動するには十分な休息が必要であり、睡眠は特に重要です。

特に厳しい寒さとなる冬季は、寝袋を間違えると寒さで眠れなくなります。そうなると次の日は頭も体もどこかふらふら。一つのミスが命取りになりやすい冬期登山では危険な状態と言えます。

そこで今回は、日本における厳冬期登山の宿泊場所から気温を想定して、能力が十分ありそうな寝袋について紹介していきます。

・使用する機会は氷点下10度以下が当たり前の世界
・着込むことが前提でも想定温度以上に耐えうる寝袋を
・FPや対応温度、値段を比較して、メーカーの特徴を知ろう
・冬には売り切れていることがあるので夏か秋に購入検討を

使用する機会を考えてみよう(八ヶ岳を想定)

冬に一泊する環境が整っている山域はかなり限られています。メジャーな八ヶ岳や奥多摩、北アルプスの一部などです。

気温と雨量の統計より

上記の表は八ヶ岳の麓にあるアメダス原村観測所で、標高は1,017mある高原です。この地点で冬季の平均気温は-3℃、最低気温は-8℃以上となっており、気軽に行けるような気温ではなくなっています。

さて、ここからアイスキャンディで有名な、八ヶ岳にある標高2,300mの赤岳鉱泉でテント泊するとします。標高が1,000m上がると、気温が約6℃下がりますので、原村と赤岳鉱泉の標高差は約1,300m。そのため気温差は7.8℃となります。

そうなると、赤岳鉱泉の冬季気温は平均で-10.8℃、最低で-16.1℃と普段では味わうことのできない気温です。私も行者小屋にテント泊したときはそのくらいの気温となり、手袋や靴下を外すと寒くなるという感覚を通り越して痛みが出てきました。シュラフのスペックとしては、快適温度(コンフォート)で-10℃くらいのものが丁度良いでしょう。

シュラフに表示されている対応温度域とは

モンベルHPより

ここで捕捉。シュラフを選ぶ基準の一つとして、どのくらいの気温まで耐えられるかということが大きなポイントですが、その基準としてISO23537という国際規格があります。この規格を採用したシュラフであれば、メーカーが違っても共通の規格なので、商品比較しやすくなります。

が、Amazonなどのネット通販にはこの規格を採用していない商品が多くあり、他メーカーの商品との性能の優劣が判断しづらくなります。個人的に国際規格を採用していないほとんどの表示温度は、国際規格の極限温度(エクストリーム)という、寝るとか言う前に生きるか死ぬかの温度域を表示させ、ある意味表示詐欺に近いことをやっていると思っています。

もちろん大手メーカーでも、独自のテストを行い、国際規格を採用していないところもあるので、一概には言えません。例としてISUKAはテスト方法や国際規格を採用していない理由をHPにアップしているので、信頼に足りえると思います。

着込む前提でも想定温度以上に耐えうるスペックを

冬山に挑む以上は低体温にならないよう、ダウンジャケットなど保温着を持参していくことは必須です。もちろん睡眠時にも着用するため、シュラフの対応温度よりも耐えうることができるかもしれません。

しかし、寒さに強いかどうかは人によって違います。自覚があればいいのですが、自分が寒さに強いかどうかわからない場合、寒さに耐えるため、保温着を考慮せず表示されている対応温度をもとにシュラフを選びましょう。

シュラフの対応温度や金額など、メーカーごとの特徴は?

シュラフで主に見るべきスペック上の数字は、対応温度や重量、フィルパワー(FP)などになります。それに加えて最終的な決め手は価格になるでしょう。

数字に現れないものとしましては、メーカーごとに他との差別化を図るため、特徴的な機能などを全面的に出しています。シュラフはいろいろなものが販売されているため、日本で販売されている主要なメーカーの厳冬期シュラフを挙げていきます。

モンベル「シームレス ダウンハガー800 EXP.」

800FPのダウンを使用して総重量が1,364gある厳冬期に対応したシュラフです。残念ながらダウン量は公表されていません。

ISO規格に対応しており、快適温度は -12℃、使用可能温度は -20℃となっています。金額は72,600円となっています。

このシュラフの特徴としては、名前の通りシームレスで、縫製がほとんどありません。また、独自の伸縮性であるスーパースパイラルストレッチ システムで寝心地が快適になるだけでなく、シュラフ内の不要な空間を無くして高い保温効率を生み出しています。

イスカ「エアプラス810」

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800FPのダウンを810g使用し、総重量1,280gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格には対応しておらず、独自のテストで算出した最低使用温度は-25℃となっています。金額は69,300円となっています。

3D構造によりダウン量が最適化され、軽量性と保温効率を高めています。

ナンガ「AURORA light 900 DX」

760 FPのダウンを900g使用し、総重量約1,400gの厳冬期用シュラフです。

EN規格に対応しており、快適使用温度は-10℃、下限温度は-19℃となっています。金額は69,300円です。

表地にオーロラテックスという防水コーティングが施されており、20,000mm/透湿性6,000g/m2/24hrsという高い防水透湿性を誇っています。また、ナンガのダウンシュラフは永久保証の対象であり、アフターサービスが充実しています。

タケモ「スリーピングバッグ11」

750FPのダウンを1,100g使用し、総重量1,650gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格には対応しておらず、独自の基準で最低使用温度は-30℃となっています。金額は47,300円です。

このシュラフはなんといってもコストパフォーマンスに優れています。個人事業で会社を経営されており、大手メーカーのように実店舗はなくネット販売のみで行っているため、徹底して経費を抑えた結果、手が出しやすい価格となっています。

ウェスタンマウンテニアリング「リンクスゴアウィンドストッパー」

850+FPのダウンを905g使用し、総重量1,590gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格には対応しておらず、独自の基準で使用温度域は-23℃となっています。金額は147,730円です。

防風性と透湿性に優れたゴアウィンドストッパーを使用しており、ダウンの保温性を最大限に発揮させす。このシュラフメーカーは値段が高い分、最高品質のシュラフを提供してくれます。

サーマレスト「ポーラーレンジャー-30℃」

800FPのダウンを965g使用し、総重量1,477gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格に対応していませんが、快適温度は-20℃、下限温度は-30℃となっています。価格は115,500円です。

独特な構造があり、まず呼気による凍結対策や保温性向上を目的としたシュノーケルフードがあります。次にサイドにジッパーをつけて、ベンチレーション機能及び寝袋から出なくても手作業ができる機能があります。また、足先の寒さを防ぐためのポケットがあるなど、個性的なシュラフとなっています。

マウンテンハードウェア「ファントムゴアテックス-40℃」

MOUNTAIN HARDWEAR
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850FPのダウンを1,307g使用し、総重量1,973gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格に対応しているかどうかは不明ですが、参考使用温度は-40℃です。価格は143,000円となっています。

防風性と透湿性に優れたゴアウィンドストッパーを使用しており、さらにダウンそのものに撥水処理をしているため、あらゆる環境で使用することができます。

ノースフェイス「インフェルノー29」

800FPのダウンを使用し、総重量1,503gの厳冬期用シュラフです。残念ながらダウン量は不明です。

ISO規格に対応しているかどうか不明ですが、最低温度規格は-29℃です。価格は121,000円です。

濡れやすい背面と頭部、足下部分に防水透湿素材を採用し、撥水性のあるダウン使用するなど、濡れからくる保温力低下を防ぎます。

シートゥーサミット「スパークSpIV」

850+FPのダウンを620g使用し、総重量880gの厳冬期用シュラフです。

EN規格に対応しており、快適温度-8℃、下限温度-15℃となっています。価格は65,560円です。

このシュラフは軽量性を重視した作りで、冬季用でありながら重量は1,000gを切っているため、ウルトラライト志向におすすめです。

マウンテンイクイップメント「SNOWLINE」

800FPのダウンを831g使用し、総重量1,490gの厳冬期用シュラフです。

EN規格に対応しており、使用温度は-23℃です。価格は107,800円です。

GOREの素材をアウターやフットボックスなどに使用しており、耐風性や透湿性を高め保温性を向上させています。

ニーモ「 Sonic 0」

800FPのダウンを720g使用し、総重量1,360gの厳冬期用シュラフです。

ISO規格に対応しており、快適温度は₋10℃、下限温度は-18℃です。価格は58,300円です。

横向き寝や寝返りをサポートするため、膝周りにストレッチ構造を採用しています。また、シュラフ内の温度調節をするために、胴体あたりに温度調節ができる開閉式のスリットが備わっています。

各製品の比較一覧

ここまで紹介した製品の一覧を表にまとめてあります。価格に対して対応温度が高いものや、対応温度に比べて軽いものを分かりやすくしてみました。

メーカーモンベルイスカナンガタケモウェスタンマウンテニアリングサーマレストマウンテンハードウェアノースフェイスシートゥーサミットマウンテンイクイップメントニーモ
製品名シームレス
ダウンハガー800 EXP.
エアプラス810AURORA light 900 DXスリーピングバッグ11リンクスゴアウィンドストッパーポーラーレンジャー-30℃ファントムゴアテックス-40℃インフェルノー29スパークSpIVSNOWLINESonic 0
総重量1,364g1,280g1,400g1,650g1,590g1,477g1,973g1,503g880g1,490g1,360g
下限温度-20℃-25℃-19℃-30℃-23℃-30℃-40℃-29℃-15℃-23℃-18℃
価格72,600円69,300円69,300円47,300円147,730円115,500円143,000円121,000円65,560円107,800円58,300円
フィルパワー800FP800FP770FP750FP850FP800FP850FP800FP850FP800FP800FP
重量比の温度-15℃/kg-20℃/kg-13℃/kg-18℃/kg-14℃/kg-20℃/kg-20℃/kg-19℃/kg-17℃/kg-15℃/kg-13℃/kg
対応温度比の価格3,630円/℃2,772円/℃3,647円/℃1,577円/℃6,423円/℃3,850円/℃3,575円/℃4,172円/℃4,370円/℃4,687円/℃3,238円/℃

重量比の温度は、1,000gに対しての対応下限温度です。イスカやサーマレスト、ノースフェイスにマウンテンハードウェアのシュラフが重量に対して保温性が高くなっています。

対応温度比の価格は、対応温度が1℃あたりの価格なので、対応温度に対してコストパフォーマンスに優れた製品となります。国内メーカーの製品であるタケモやイスカが飛び抜けています。

八ヶ岳を想定すれば₋15℃に対応していればokなので、どれも基準を満たしています。マウンテンハードウェアやサーマレストなどはオーバースペックだと思いますが、日本で販売されているラインナップの中から選択した結果となります。

ただ、一覧表では数字上のスペックしか現れないため、防水処理を施してあるものや、独自の構造による快適性など数字に表れない箇所が多くありますので、厳冬期シュラフを選ぶときの検討材料の一つとしてとらえてください。

厳冬期の登山をする予定があれば早めの購入を検討しよう

厳冬期のシュラフについて触れてきました。紹介した製品の中にはすでに売り切れとなっているものもあり、夏や秋に販売される製品もありますので早めの購入検討を心掛けましょう。

今回は厳冬期に登山する場合を考慮して、重量が大切な要素と考えダウン製品のみをピックアップしました。登山ではなくキャンプをするだけであれば、多少重くても価格が安い化繊も視野に入れてみると良いでしょう。機会があれば化繊シュラフも調べてみたいと思います。

また、通販サイトでは色々なシュラフが販売されており、コストパフォーマンスに優れた製品は数多く出回っていますが、粗悪品の場合も考えられるため、実績がある製品やメーカーを選びました。また、海外にも多くのシュラフ製品があるのですが、あくまで日本で正規に販売されているメーカーのみとなっています。

そのあたりも調べて紹介していきたいと思っています。

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