Cinema Lineという動画に特化したカメラで3,300万画素を有するFX2が発表されました。メカシャッターも搭載されているので、恐らく写真もある程度撮ることを前提にしたカメラなのでしょう。
そこで他メーカーの動画寄りカメラで価格が比較的似ているNikon Z6ⅢとLumix S1Ⅱを比較していこうと思います。
スペック比較表

項目 | LUMIX S1 II | Nikon Z6 III | Sony FX2 |
---|---|---|---|
センサー | 24.1MP 部分積層型 | 24.5MP 部分積層型 | 33.0MP 裏面照射型 |
動画性能 | 6K/30p、4K/120p (10bit) | 6K/60p、4K/120p (10bit)、 | 4K/60p(1.5倍クロップ10bit) |
内部RAW記録 | ProRes RAW HQ5.8k30p | N‑RAW 6K60p/ProRes RAW HQ 6K30p | 非対応※16bit RAW出力 (HDMI経由) 対応 |
オートフォーカス | 被写体認識: 人物、動物、自動車、バイク、電車、航空機、「アーバンスポーツAF」 | 被写体認識: 人物/動物/鳥/車/バイク/自転車/列車/航空機など | 被写体認識: AIユニット搭載、人物・動物・鳥・昆虫・車・電車・航空機 |
連写性能 | 70コマ/秒連写(電子)※12-bit RAW時。14-bit RAW時は60コマ/秒、プリ連写対応 | 120コマ/秒(約11MPでJPEG・プリ連写対応) | 10コマ/秒 |
手ブレ補正 | Dual I.S.(レンズ+ボディ協調)対応アクティブ手ブレ補正: 動画電子IS対応(約1.1倍クロップ) | 電子手ブレ補正: 動画で電子VR対応(微小クロップ) | 電子手ブレ補正: アクティブモード対応(約1.1倍クロップ) |
ファインダー | 576万ドット, 120fps表示 | 576万ドット1,20fps表示 | 369万ドット, 120fps表示,チルト式 |
モニター | フリーアングル 184万ドット | バリアングル 210万ドット | バリアングル 104万ドット |
記録メディア | CFexpress B + SD | CFexpress B + SD | CFexpress A + SD |
冷却方式 | 冷却ファン内蔵 | 排熱構造 | 冷却ファン内蔵 |
サイズ (幅×高×奥) | 約134.3×102.3×91.8mm重量:約800g | 約138.5×101.5×74.0mm重量:約760g | 約129.7×103.7×77.8mm重量:約679g |
発売日 | 2025年6月19日 | 2024年7月12日 | 2025年8月1日 |
定価 | 455,400円 | 396,000円 (実売約35万円) | 416,900円 |
センサー/画質

S1Ⅱ、Z6Ⅲともに部分積層の約2400万画素で、読み出し速度が速くローリングシャッターの歪みをかなり抑えられます。
対してFX3は3300万画素の裏面照射で、高画素になっていますがローリングシャッターの歪みに対する耐性は低くなっています。写真を撮るときにはクロップ耐性がある点が有利でしょうか。
動画性能

S1ⅡとZ6Ⅲは6k60pや4k120pで撮影でき、RAWの内部収録も可能なことに対して、FX2は4k60pの1.5倍クロップやRAWの内部収録不可と劣っています。ただ、外部出力で16bitRAW撮影が可能なため、本格的な映像制作者にはそこまで変わらないかもしれません。
長時間撮影に関しては、ファン内臓がS1ⅡとFX2に対して、Z6Ⅲは放熱構造のみとなっているので夏場などの過酷な環境では不安が残ります。
ハードの設計はS1ⅡとZ6Ⅲが通常のスチルカメラに対して、FX2は動画撮影に特化した設計ですので、動画撮影においては優位です。ただ、モニターやファインダーのドットはFX2が最も低いため、太陽光などの強い光がある場合は対策が必要となるでしょう。
写真性能

S1Ⅱは70コマ/秒の高速連写にプリ撮影、9600万画素の高解像度撮影など高水準な性能を持っています。
Z6Ⅲも画素数は落ちますが120コマ/秒の連写が可能で、プリ撮影や同じく9600万画素の高解像度撮影が可能です。
FX2はこの2機種に比べて写真機能は劣っており、10コマ/秒の連写でプリ撮影や高解像度撮影はできません。
ハードに関してはS1Ⅱのモニターがフリーアングルとなっており、あらゆる角度から撮影できる点が優れた点でしょう。FX2もチルト式ファインダーである程度の恩恵はありそうです。
オートフォーカス

どのカメラもAIを活用したAFにより、被写体認識が高くなっています。S1Ⅱには激しい運動を想定したアーバンスポーツモードを搭載するなどAF性能が向上しています。3つのカメラで大きな差はないと思いますが、AFに定評のあるSonyが少し優位でしょうか。
手振れ補正

LumixはアクティブI.Sなど手振れ補正に定評があり、Sonyもアクティブ手振れ補正やダイナミックアクティブ手振れ補正による強力な機能が備わっています。Z6ⅢもZ8やZ9を超える8段手振れ補正が備わっています。
サイズ

最も大きく重たいのはS1Ⅱですが、Z6Ⅲとさほど変わりません。FX2が100gほど軽くなっているので、小型軽量に定評のあるSonyといったところですが、α7cⅡのようなサイズでもない限り、特段優位にはならないでしょう。動画撮影でリグを組み始めると100gはそこまで大きな数字ではないと思いますので。
価格

定価でみるとS1Ⅱが約45万円で、FX2が約41万円、Z6Ⅲが約40万円と大きな差はありません。(Z6Ⅲは5月29日に435,600円から396,000円に値下げしていています。)2024年に発売されたばかりのZ6Ⅲですが、キャッシュバックキャンペーンで5万円引きになっていたりと実売30万円ほどで手に入るので、現状は最もコスパに優れたカメラでしょう。
どのカメラを選ぶべきか
特徴 | 最適機 | 注目ポイント |
動画機寄りハイエンド | LUMIX S1 II | 70fps連写・ 5.8K30ProRes RAW HQ |
コスパの良いオールラウンダー | Nikon Z6 III | 120 fps 連写・6K60 N‑RAW |
映像制作+高画素写真 | Sony FX2 | チルトEVF 内蔵・Cinema Line UI |
新たな動画機として登場したFX2ですが、動画性能においてどうしても他カメラより劣っている部分が目立っている印象。ハード面に関してはネジ穴の豊富さや内蔵冷却ファン搭載、それでいて軽量など優れたところがあります。
写真も動画も高水準で撮りたいという方はS1Ⅱ、他に比べて現在の価格がかなり安くコスパの良さならZ6Ⅲというところでしょうか。

レンズ資産の点でSonyを選ぶ理由は十分ありますが、その場合はFX3やFX30なども比較対象になってくるので、FX2の位置づけがどうしても中途半端に見えるのは惜しいところ。