岩と雪の殿堂とも呼ばれ、峻厳な佇まいをしている剱岳。日本海側特有の気候による豪雪地帯であっても、山頂部の岩場は黒くなっているほど険しい場所です。
立山室堂からの別山尾根ルートを多くの方が利用されると思いますが、今回は馬場島からの早月尾根ルートを利用して登ってきました。
・馬場島がスタート&ゴール
・標高差は2,239mで急勾配のコース
・標高2,800mを超えると本格的な岩場で鎖場の連続
ルート基本情報
行程
日帰り 13時間37分 15.8㎞ 登り2,379m 下り2,380m 山頂まで390分
馬場島【出発地】~松尾平~早月小屋~剱岳~早月小屋~松尾平~馬場島【到着地】
ルート地図及び情報
下記をクリックするとYAMAPで地図や活動時間などの詳細な情報が見られます。
早月尾根から剱岳を登る【百名山二十九座目】 / bataoさんの剱岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
ルート詳細情報
馬場島
馬場島荘前の公共駐車場からスタートです。ほかの駐車場としては、早月川側に3か所ほど駐車場があります。この時点で剱岳の
すぐそばには無料の野営場があるため、前日泊も可能です。
少し歩いていくと、登山口への分岐があります。
有名な石碑である「試練と憧れ」。剱岳の厳しさと、それに向き合う登山者を現しているように思えます。
登り始めからいきなりの急登です。道自体は整備されています。松尾平までは急登が続きます。
松尾平
松尾平は標高1,000m前後の平らな場所です。途中に標高の標識とベンチがあるのでゆっくりできます。標高の標識は200mごとに設置されているので、進んでいく際の目印になります。
泥を避けるための木があるので、泥だらけにならないように歩きます。
林の中ですが、景色が見える場所も。日本海まで眺めることができます。松尾平を過ぎると、再び急勾配が始まり、早月小屋まで続きます。
早月小屋
標高1,400m地点。木の丸太によるベンチがあるので、ここでも休憩できます。
猫又山から大猫山への稜線。
夏を感じる雲が出てきているので、青空はそう長くは持たないでしょう。
反対側の奥大日岳方面の山々
バリエーションルートの北方稜線である小窓の形がよくわかります。
道はゴロゴロした石があって一段一段が高かったり、木の根があったりと歩きづらく足に負担がかかります。
標高2,000m地点で小屋まであと1.0km。標高差は200mほどです。
途中には小さい池が。
短いですがはしごがいくつか登場してきます。早月小屋に近づいてきた証拠です。
鎖場+ロープ設置場所も。無くても登れないことはないというくらいの場所です。
早月小屋手前には広い場所丸山があり、周囲を展望できます。剱岳の山頂部は残念ながら雲に覆われています。
早月小屋に到着です。小屋泊は1泊2食で12,500円、素泊まり8,500円です。テント泊は1人1,000円となっています。水は2L で1,300円で、早月尾根は水場がないため貴重な水分補給場所です。
休憩スペースの机に小窓尾根の絵が描かれています。
写真だとこんな感じでしょうか。
テント場の雪はかなり溶けています。
山頂まで2.9km、標高差799mを登っていきます。
剱岳
早月小屋からも急登が続きます。崩壊している場所がありますが、道は固まっていてロープもあるので、心配するようなことはありません。
まだまだ雪が残っているカガミ谷です。上空には積雲が発達しています。
小屋を眼下に日本海方面。こちらは海側のため雲がほとんどありません。
早月小屋から0.8kmの標高2,400m地点。
険しい岩々も近づいてきました。
標高2,600mを過ぎると、雪と岩が多くなってきます。
シナノキンバイやクルマユリ
蕾のタカネマツムシソウやハクサンチドリ
イワギキョウにトリカブトと多くの高山植物が咲いていました。
この辺りから鎖がある岩場が出始めます。
雪の上を歩くことも。斜度は緩やかなのでツボで渡れます。
斜度がある岩場には大体鎖があるので安心です。
山頂まで0.7kmの標高2,800m地点です。ここからは岩場の連続で、距離以上に時間がかかります。
見た目通り岩場しか歩く場所がありません。
危険個所には鎖が設置してあるので、離さないように注意していきます。このような場所がほかにもあり、カニのハサミと呼ばれている難所があります。壁の鎖のほかに、足場となるボルトが打ち込まれており、難易度が高い場所です。今回はそこがカニのハサミと気づかず、撮り忘れました。
呼び名の通り岩と雪しかありません。
別山尾根ルートが見え隠れします。
ちょうどカニのヨコバイを進んでいる登山者がいました。技術的難易度が高そうです。
別山尾根ルートとの合流地点。ここまでくれば山頂はすぐそこです。
黄色の標識も立っています。
へとへとになりながらも山頂に到着。石に囲まれた祠が建てられています。
山頂へのバリエーションルートには危険であることを知らせる看板が設置されています。
周囲は真っ白ですが、チラチラと源次郎尾根や八ツ峰が見え、その険しさが垣間見えます。
天候が回復する見込みがないため、下山していきます。
ガスにまみれたおかげか、ライチョウのつがいが現れてくれました。砂浴びをしていたようです。
長い下山道を終え、日が暮れる前に登山口に到着。
駐車場は空きが目立ちました。
この登山を振り返って
北アルプス三大急登にも数えられるほどの急勾配、案の定足が痛くなり、登山時間も12時間を超えてしまいました。先日登った笠新道はつづら折りでしたが、早月尾根は尾根道を登っていくため、つづら折りの箇所はほとんどありません。そのため、急斜面で段差が大きい箇所ばかりで、足への負担が大きかったと考えられます。ストックは岩場では収納する必要がありますが、それ以外では足の負担を軽減してくれますので、あった方が支えになります。
また、標高差が大きく、登山口は標高760mであるため、夏場の気温は想像以上に高くなっています。今回は夕方ごろに下山したためそこまで暑さは感じられませんでしたが、昼過ぎくらいの下山になると蒸し風呂状態だったでしょう。その点では、時間がかかったことで好転したことの一つだと思います。
水は2.5Lでぎりぎりでした。途中雲に覆われて、暑さをしのげたことや、疲労で足取りがゆっくりになり、思った以上に汗をかかなかったこともあります。水の補給は早月小屋で購入するほかないため、(池や雪を溶かすという手段もありますが)多めに持って行った方が無難です。
標高2,800m以上の岩場は技術的な難易度が高いようには感じられませんでした。慎重に足場を確保し、鎖などを利用すれば安全です。ただ、岩場は長く続くので、集中を切らさないよう注意が必要です。
コース全体で見れば日帰りは健脚向きなので、今度来ることがあれば早月小屋を利用した1泊2日が体力的にちょうど良いと思いました。
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