nikonからコンパクトシネマカメラZRが発表されました。買収したREDのカラーサイエンスを搭載したカメラで、Z6Ⅲと同じ部分積層型センサーを搭載しています。それでいて価格は約30万円とシネマカメラとしては手ごろな価格帯となっています。
同日発表があったばかりのキャノンEOS C50をかなり意識していると思われますが、他のコンパクトシネマカメラとどう違うのか比較していきます。
スペック比較表
項目 | Nikon ZR | Sony FX3 | EOS C50 | Nikon Z6 III | Sony ZV-E1 |
---|---|---|---|---|---|
センサー | 24.5MP 部分積層型 | 12.1MP 裏面照射型 | 32.4MP | 24.5MP 部分積層型 | 12.1MP |
動画性能 | 6K/60p、4K/120p (10bit) | 4K/120p(10bit) | 7k/60p(オープンゲート)、4k/120p (10bit) | 6K/60p、4K/120p (10bit) | 4K/120p(10bit) |
内部RAW記録 | あり(R3D NE/ N-RAW/ ProRes RAW HQ) | 非対応※16bit RAW出力 (HDMI経由) 対応 | 7k/60p | N‑RAW 6K60p/ProRes RAW HQ 6K30p | 非対応 |
デュアルベースISO | 800 / 6,400 | 800/12,800 | 800/6,400 | 800 | 640/12800 |
4k120pクロップ率 | APS-C | 約1.1倍 | 無し | APS-C | 約1.1倍 |
ダイナミックレンジ | 15 | 15 | 16 | 15 | |
オートフォーカス | 被写体認識: 人物/動物/鳥/車/バイク/自転車/列車/航空機など | 顔/瞳 | 被写体認識:人物/動物/車/バイク/鉄道/飛行機 | 被写体認識: 人物/動物/鳥/車/バイク/自転車/列車/航空機など | 被写体認識: AIユニット搭載、人物・動物・鳥・昆虫・車・電車・航空機 |
連写性能 | 120コマ/秒(約11MPでJPEG・プリ連写対応) | 10コマ/秒 | 40コマ/秒(電子)プリ連写対応 | 120コマ/秒(約11MPでJPEG・プリ連写対応) | 10コマ/秒 |
手ブレ補正 | 7.5段 | 5.5段 | 無し | 8.0段 | 5.0段 |
ファインダー | なし | 無し | 無し | 576万ドット | なし |
モニター | バリアングル 307万ドット | バリアングル 236万ドット | バリアングル 162万ドット | バリアングル 210万ドット | 104万ドット |
記録メディア | CFexpress B + microSD(UHS-I) | CFexpress A/SD×2 | CFexpress B + SD | CFexpress B + SD | SD(UHS-I/II) |
冷却方式 | 排熱構造 | 冷却ファン内蔵 | 冷却ファン内蔵 | 排熱構造 | ファンレス |
サイズ (幅×高×奥) | 133×80.5×48.7 mm | 129.7×77.8×84.5mm | 142×88×95mm | 138.5×101.5×74.0mm | 121.0×71.9×54.3 mm |
重量 | 630g | 715g | 670g | 760g | 483g |
発売日 | 2025年10月24日 | 2021年3月12日 | 2025年11月下旬 | 2024年7月12日 | 2023年4月21日 |
定価 | 299,200円 | 581,900円 | 554,400円 | 396,000円 | 328,900円 |
実売価格 | 486,000円 | 316,000円 | 230,000円 | ||
その他 | HDMI端子(Type D) 5種の内蔵マイク | ハンドルユニット込 | ハンドルユニット込 | HDMI端子(Type D) 3種の内蔵マイク |
コンパクトシネマカメラとそれに近い性能を持ったカメラをピックアップしています。
ニコンZRの特徴

ZRはZ6Ⅲと同じ部分積層センサーを採用しており、基本的な性能は同じになります。違う点は、REDのカラーサイエンスを実現したRAWフォーマットR3D NEで内部収録可能な所です。REDの高価なカメラを買わずとも約30万円でそのカラーサイエンスが手に入るのは大きな魅力です。ただ、R3D NEは現在REDCINE-X PROのみでしか現像・変換できないため、DaVinci Resolveなどのソフトで編集する場合は一度別のフォーマットに変換する手間が掛かります。
他にはデュアルベースISOを搭載し、800/6400と暗所でも十分な映像クオリティを生み出します。また、内部マイクは5種類の指向性があり、32bitフロート録音が可能となってるので、手軽に高クオリティな音を録音できます。モニターもほとんどのカメラが3型の中4型と大きくなっており、307万ドットと明るいモニターになっています。
それでいて静止画性能も充実しており、高速連写に加えてプリ連写対応となっています。
このスペックで約30万円という価格設定は驚きですが、劣っている部分もあります。デュアルスロットで片方はCFexpress Bですが、もう片方はmicroSDとほぼおまけです。HDMI端子がType Dと小さい所も業務で使用する場合不安を感じさせる点です。また、グリップは通常のカメラと比べればほぼなく、ジンバル等を使わないのであれば撮影し辛く感じるでしょう。また冷却ファンを内蔵していないため、長時間の撮影は注意が必要となります。
Sony FX3との比較

コンパクトシネマカメラでは人気のFX3は内部RAW収録ができない所が大きな違いです。6kで撮影できるところも編集の自由度が増します。また手振れ補正もZRが7.5段でFX3が5.5段と勝っています。静止画性能はメカシャッターを搭載していますが、連写性能はZRに分があり、被写体認識の数も多く勝っていると言っていいでしょう。ハンドルユニット込とはいえ、価格が約20万円の差があるのも大きな違いです。
反面ベースISOはFX3が12800と非常に暗所に強く、4k120pでのクロップ率は若干程度で済んでいます。また、記録メディアがCFexpress A/SD×2で冷却ファンも内蔵しており、業務において信頼できる性能を有しています。

EOS C50との比較

同日発表されたEOS C50はセンサーが約33MPと高画素になっており、7kでの撮影が可能です。また、オープンゲートで撮影が可能なので、縦型撮影にも柔軟に対応できます。冷却ファンを内蔵しており、業務でも安心して使用することができます。
ただ、手振れ補正は無くレンズ依存、価格はハンドルユニット込50万円と大きく違います。モニターもZRに比べれば小さく明るさも劣っています。
Nikon Z6 IIIとの比較

同じ部分積層センサーを採用したカメラで、基本的な性能は同じです。ただ、デュアルベースISOではなく、R3D NEも搭載されていないため、動画性能では一歩劣っています。
スチル機としてはファインダーがありメカシャッターを搭載しているので、写真を撮ることにも重きを置く場合は選択肢になるでしょう。

Sony ZV-E1との比較

Vlog機のZV-E1ですが、基本的な性能はFX3と同等で、ベースISOが12800と暗所に強いカメラとなっています。また、多くの被写体を検出することができ、AF性能は向上しています。価格は20万円台で購入することができ、価格帯ではZRと一番近いライバルとなります。
ただ、動画機としては劣っている部分が多く、RAW収録は外部出力でもすることができず、冷却機能が無いため高温や長時間の撮影ができません。また、モニターが104万ドットなため、見づらい場面が多いと思います。記録メディアも1スロットでSDカードというのも不安な要素です。
業務用としてはあくまでサブカメラという位置づけですが、SNSに投稿するカメラとしては十分な機能があります。

ZRはコスパの優れたコンパクトシネマカメラ
フルサイズのコンパクトシネマカメラが50万円台の中、約30万円という価格設定にはnikonの本気度が伺えます。ただ、その分冷却ファンを内蔵していなかったり、記録メディアが実質1つと業務用途においては不安な所が目立ちます。
そのため、メインカメラというよりも、REDのフォーマットが使えるサブカメラという位置づけでしょうか。もしくはSNSがメインのコンテンツクリエイターが持つカメラとしては十分な機能があるので、プロでなくても手が届く価格はうれしい所です。