キラキラした名称だが、山容はあまり派手ではなく逆に地味ともいわれている皇海山。奥深い山ですが、以前までは悪路の林道を通れさえすれば、比較的短距離の山でした。しかし、自然災害により林道が閉鎖となり、実質的に現在登山できるルートは、銀山平から庚申山荘を経由するクラシックルートのみとなっています。クラシックルートは長く険しい道のため、百名山の難関ともいえるでしょう。今回は、この唯一の登山道であろうクラシックルートから登ってきました。
・かじか荘が登山口&下山口
・一の鳥居までは片道約4kmの林道歩き
・庚申山は鎖やはしごがある岩場
・庚申山から鋸山まではアップダウンのある尾根歩き
・鋸山への上り下りが核心部で、鎖やはしごの連続
・六林班峠への道は藪漕ぎだが道は分かる
ルート基本情報
行程
日帰り 10時間13分 27.7㎞ 登り2,646m 下り2,645m 山頂まで285分
かじか荘【出発地】~庚申山荘~庚申山~鋸山~皇海山~鋸山~六林班峠~庚申山荘~かじか荘【到着地】
ルート地図及び情報
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クラシックルートで皇海山を登る【百名山七十座目】 / bataoさんの渓雲山・庚申山(栃木県)・駒掛山の活動データ | YAMAP / ヤマップ
ルート詳細情報
かじか荘
かじか荘の前には庚申山や皇海山の登山口標柱が立っています。かじか荘の駐車場はかじか荘の利用者のみ利用できます。
少し奥に行くと登山者用駐車場があり、この写真のさらに道を進んだ先にも駐車場があります。ここにトイレはありませんが、少し下ったところにキャンプ場があり、公衆トイレもあります。
駐車場の奥には車両通行止めのバーがあり、ここから皇海山へ向かいます。注意書きがあり、降雨時は落石に注意とのこと。
※庚申山荘までの写真は日が暗いうちに出発したため、下山時に撮影したものです
林道の横に紙垂のようなものが置かれています。庚申山が山岳信仰のある山なので、それにまつわるものでしょうか。
紅葉が見所の庚申渓谷です。確かに山の斜面は紅葉で綺麗に彩られていました。
林道の中にあるゲートを通り過ぎていきます。
木々や葉であまり林道からは見えない坑夫滝。悲話があるみたいですが、ネットで調べてもいまいち確信的なものがありません。足尾銅山があったので、名称から見てもその関係だとは思いますが…
林道は荒れています。土砂が流れても車が通れるくらいの幅しか片付けていないようです。
大きな石が多く積まれている天狗の投石。ここだけ石が多いのは異様です。
一の鳥居に到着です。ここまでの道は林道のため、自転車を使用してきている人もいます。ここから登山道のような道になっていきます。
庚申山荘
登山道は小さな沢の近くを歩いていきますので、何回か橋を渡ることになります。
途中に庚申七滝を見れる箇所があるので寄り道していきます。
坑夫滝とは違い、ちゃんと滝が見え、かなり近づくことができます。名称から滝が七つあるのかと思いましたが、どうやら滝が七段になっていることが由来のようです。
庚申山の表口である磐裂神社から百丁目の証が建てられています。
鏡岩ではテーブルや椅子の休憩スペースが設けられています。ここは猿に助けられたために、自分の娘を猿に嫁がせ、父娘の分かれた場所と言われています。
夫婦蛙岩は確かに言われてみれば蛙の形をしています。
岩と岩の間を通り抜ける仁王門。ここまでくると庚申山荘はもうすぐです。
日光を開山した勝道上人は庚申山も開山しており、碑が建てられています。この奥が分岐点です。
庚申山とお山巡りの分岐点です。奥には旧猿田彦神社跡があります。お山巡りは日光修験道であり、岩場が多い難所で時間もかかるため、今回は庚申山荘経由で登っていきます。
庚申山荘に到着です。かじか荘にて受付しており、基本的には無人ですが、ハイシーズンは管理人がいます。布団や水場、トイレがあり、素泊り2,080円となっています。
ここから庚申山の山頂目指して登っていきます。
庚申山
庚申山特有の奇岩がお出迎えです。ここから登るというわけではありませんが、岩のえぐれた箇所を通ります。
南総里見八犬伝の舞台にもなっているようです。それだけ風変わりな場所ということでしょうか。
お山巡りコースではないので楽に登れるかと思いましたが、がっつりはしごや鎖が出てきます。
足場が小さい所を歩く場面も。壁に鎖が設置してあるので、手で握りしめながら進んでいきます。
一の門ということは、ここからスタートするのでしょうか。
お山巡りコースと合流しました。ここから山頂までは一本道となります。
展望がない樹林帯です。勾配は山頂に近づくにつれて緩くなっていきます。
庚申山の山頂につきました。今までの道と変わらず木々によって展望は遮られています。
ただ、山頂から少し進むと開けた場所があり、皇海山などの北側の山を眺めることができます。
右側が皇海山で、左側が鋸山です。ここからはあまり鋸山の鋭さが伝わってこないです。
真ん中のボコっと山頂が出ている山は日光白根山でしょう。右側には男体山があります。
ここからは尾根伝いに鋸山を目指していきます。
鋸山
最初からかなりの細尾根でしたので、これがずっと続くのかと思いきや
そんなことはなく、森の中を進んでいきます。
鋸山から南へ続く稜線が垣間見えました。袈裟丸山という山はどのピークなのでしょうか。
アップダウンを繰り返していきます。ピークには名前があり、駒掛山や渓雲山がありますが、標識が見当たらなかったので、いつの間にか過ぎてしまったようです。
薬師岳には標識がありました。
白山はピークではなく場所の地名でしょうか。
白山は開けた場所で、眼前に鋸山までの道と皇海山が目に入ります。鋸山からの下りはかなり急斜面であることが一目瞭然です。
白山を過ぎると道の険しさが増します。一部崩れているところも。
鋸山が姿を現しました。この岩山を登っていきます。小さいですが、先行者とその下にはしごがあり、どのような道か物語っています。
まずは岩場の急下降です。鎖があり、ホールドできる岩場ですが、壁に近い傾斜で足元を確保しながら降りていきます。
下りがあれば今度は登り。見えづらいですが、左側へトラバースするための鎖があります。
先ほど下った岩壁を見返すと、その急峻さが改めて伝わってきます。
そのあとも鎖やはしごが設置された細尾根を歩いていきます。
梯子はしっかりと固定されており、そこまで長くありません。
六林班峠との合流地点まで来ると険しい道は終わり、山頂はすぐそこです。
鋸山山頂に到着しました。今回の目的地である皇海山がよく見えます。
先ほど通ってきた岩の細尾根。特に最初の下りは大きくえぐれています。
皇海山へ行くために、一旦下っていきますが、この下りも簡単な道ではありません。
皇海山
急斜面に鎖はないですが、ロープはあります。
ザレている道もあるため滑りやすく、下に人がいる場合は落石しないように慎重に行く必要がある場所です。
急斜面を下り終えると緩やかな樹林帯の中を歩いていきます。
皇海山と鋸山の鞍部に差し掛かりました。現在は利用できない粟原川林道からの登山道と合流する場所になります。
奥深い山のためか、単独行動はしないよう注意する看板がでかでかと立てられています。
少し開けた場所なので、鋸山の形がよくわかり、名称の通りギザギザした山であることが分かりやすい場所です。
山頂までの距離標識がポンポンとそこらへんに立っています。この皇海山入口は通ることができない林道からの登山口です。
皇海山への登りは、勾配が徐々に増していきます。
中にはロープが設置してあるような急斜面も。足もとは岩や木の根で歩きにくい道です。
山頂に近づくと勾配が緩やかとなり、この青銅の剣が見えたら山頂は目前です。
皇海山山頂に到着です。ご覧の通り木々に囲まれ、見えるのは青空のみです。日本百名山のほかに、栃木百名山でもあります。ここから下山ですが、来た道は通らず六林班峠を経由するルートを歩んでいきます。
鋸山から六林班峠への分岐があります。
笹藪漕ぎをする場面があるそうですが、上から見る限りは背の低い笹原があるだけのように見えます。
最初のうちは展望があり、皇海山も見ることができます。
が、徐々に林の中へ入っていくと、背の高い笹が出てきます。この時点では道がはっきりわかり、さほど問題ではありません。
進んでいくにつれ笹藪が濃くなっていき、道になっていることは分かりますが、足元が見えなくなるくらいです。倒木などがあるのでバランスを崩さないようにしていきます。
道に迷わないように目印がつけられている箇所もあるので、見失わないようにしていきます。
通ってきた道を振り返りますが、どこが道だか若習いくらいの笹藪地帯です。
この看板がみえれば笹藪漕ぎは終わりの合図となります。
三角点が埋まっていますが、ここが女山です。標識などは見当たりません。
そのまま行くと六林班峠にたどり着きます。ここからさらに袈裟丸山へ続く道があるそうですが、道が分からず藪漕ぎが待っていそうです。
峠の標識からUターンすると道があり、庚申山荘へと続いています。ここからは長いトラバースの道となっています。
道中何度か小さな沢を渡ることがあり、水分補給ができます。
少し危険な個所にはロープが設置してあり、道自体は整備されていると思います。
このような道がずっと続いていれば楽なのですが、実際はそうではありません。ここまで歩いてきた疲労と相まってこの道がものすごく長く感じます。
天下見晴といういかにも展望がよさげな場所がありますが、寄り道せずに下山していきます。ここまでくれば庚申山荘へはあと少しです。
庚申山荘が木々から見えてきたとき、やっと着いたと胸をなでおろしました。ここからは来た道の林道を下っていきます。
戻ってきたとき駐車場に多くの車が停まっていますが、皇海山以外の山へハイキングに来た人や、かじか荘の温泉を利用しに来た人などがいるようで、改めて皇海山の難易度を感じました。これで今回の山行は終わりです。
この登山を振り返って
事前に得た情報の通りロングコースかつ険しい道でした。林道歩きの往復約8kmを抜いたとしても、20km近くの道のりです。それに加えて、庚申山や鋸山は鎖場の連続で慎重に進まざるを得ず、六林班峠への道は藪漕ぎで時間を普通の登山道より多く消費します。登山の原則である早出早着の意識が大切です。
山小屋は庚申山荘しかないので、少しでも距離を縮めたい場合は利用しましょう。それでも、全行程のうち6kmしか短縮されないので、日本百名山の難関であることが分かります。
展望は基本無く地味な山と思われていますが、林道歩きから庚申山の岩場、尾根歩きときて鋸山の険しい道、六林班峠への藪漕ぎなど変化に富んだ道ともいえます。展望も要所で開けた所があり、皇海山や鋸山、日光の山々を眺めることができるので、山小屋がないこと以外は悪くはない道でしょう。
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