初めてキャンプや登山にお泊りに行くとき、必ず必要なものとして寝袋があります。どれが良いか通販サイトで調べてみると、数千円でお手頃そうなものがわんさかありますが、果たして数値通りの性能はあるのか、大手メーカーと比較してコスパは本当に良いのか、寝袋の種類などを確認しながら比較していきます。
寝袋の商品ページにある温度表記
この商品はドラマのゆるキャン△でも使用され、評価の数も約2,800個と大人気のようですね。商品名に-15℃と表示されているので、極寒の地でもぽかぽか眠ることができると思ってしまいます。
まず、そもそもこの温度(使用温度域)はどのようにして定められているのかについてです。
国際規格ISO23537とは
寝袋の使用温度域は国際規格ISO23537による統一された試験方法があります。使用温度域は3つに分かれており、快適温度・下限温度・限界温度があります。なお、極端な気候帯や軍事用などの特定の目的や、子どもや赤ちゃんには適用されません。
この規格があることで、他のメーカー同士でも寝袋の性能を比較することができます。
快適温度(Comfort temperature)
一般的に代謝が低く、寒さに対する耐性が低い人(成人女性を想定)が、仰向けなどリラックスした姿勢で快適になることができる下限値です。
下限温度(limit temperature)
一般的に代謝が高く、寒さに対する体制が高い人(成人男性を想定)が、寝袋の中で体を丸めた状態で眠ることができる下限値です
限界温度(extreme temperature)
一般的に代謝が低く、寒さに対する耐性が低い人(成人女性を想定)が、寝袋の中で丸まった状態で震えを伴いながら6時間持ちこたえられる下限値です。この温度だと低体温症により死に至る危険性があります。
メーカーによっては不採用
この国際規格ですが、対応していない大手メーカーもあります。というのも、元々はヨーロッパの基準であり、日本人よりも寒さに強い人種が基準となっています。
日本国内の大手メーカーであるISUKAは、このテストは静止状態であるため睡眠中の動きを考慮していないなどの理由から採用しておらず、独自のテスト方法による使用温度域を算出しています。
格安メーカーは国際規格を採用しているのか
上で触れたホークギアの寝袋はこの国際規格を採用しているかどうかですが、採用していない可能性が高いです。採用していれば、国際規格を表示することで信頼性がより高まるはずだからです。表示していないということはそういうことなんでしょう。検査にはそれなりの費用も掛かるためだと思います。
Amazonにはない情報が他の通販サイトにあったりする
Amazonでは快適温度なる表記はありませんでしたが、同じ商品で楽天にはありました。さらにー15℃時の状態だと、断熱材として機能しなくなると掲載されていますので、ー15℃の環境で使用すると命の危険にさらされる可能性があるということです。
寝袋を選ぶポイント
格安寝袋の表示温度は正直信用するには怖い数字ですが、大手メーカーの寝袋はそれなりのお値段となっています。お手頃な価格の寝袋を購入したい場合、表示温度以外でも寝袋の性能を比較できる品質について書いていきます。
形状
寝袋の形状は大きく分けて封筒型とマミー型の2つあります。それぞれの長所と短所を比較しながら見ていきます。
封筒型
封筒型は布団のような形をしていて、寝心地も布団人近いものがあります。ジッパーがサイドについており、内側をすべて広げることができ、掛布団のように使うこともできるので、温度調節がしやすくなっています。
中には2つの寝袋をジッパーで連結し、大きな寝袋となって複数人眠れるタイプもあります。
欠点としては、中のスペースが広すぎて、保温力が高くないことです。外から冷たい空気が入らないようドローコードで絞めることもできますが、頭は寒くマミー型に劣ります。
マミー型
人の形に近い形をした寝袋です。寝袋と言えばこの形を想像する人も多いのではないでしょうか。こちらも温度調節のためサイドにジッパーが付いているものが多いです。
人の形に合わせた分中は狭く寝心地は封筒型に比べ劣りますが、その分保温力は高くなっています。
頭もカバーでき、ドローコードにより顔だけ外に触れるような形にできるので、氷点下の世界ではこちらの方が信頼できます。
中わた
寝袋の中に詰まっているものは大まかに分けて2つあり、化繊とダウンがあります。メーカーによって独自の加工をしていたりしますが、ここではざっくり説明します。
化繊
化繊とは化学繊維のことで、原料の石油などを化工したポリエステルやナイロン等が中に詰まっています。
ダウンと違って中わたの化繊はあまり変化せず、どうしても収納サイズが大きくなり、重量も増します。その代わり洋服の素材とっしょなので、水に強く洗濯でき、人工物のため比較的安価なものが多いです。
ダウン
中に羽毛が入っている寝袋です。布団でも羽毛布団という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、高級な水鳥からの摂取量は5~10gでとても貴重なものです。
羽毛が中で膨らみ、空気の壁を作ることから、保温力は高く軽量、収納するときは羽毛がつぶれてコンパクトになります。その分価格帯は高くなり、水に濡れると羽毛が膨らまず、気軽に洗濯ができません。
羽毛にも品質があり、その一つにフィルパワー(FP)があります。羽毛のかさ高を表す数値で、高いほど少ない羽毛で大きく膨らみます。
中わたの素材でダウンとフェザーがありますが、ダウンは羽毛でフェザーは羽根です。ダウンは水鳥の胸にしか映えませんので、ダウンの比率が高いほど価格が上がります。
重量
中わたの所でも触れましたが、単純に高級なものほど軽く、保温力が高いものです。高級ダウンを使用しているということですね。
化繊もそれぞれのメーカーで開発しており、軽量化がすすめられていますが、ダウンには及ばないのが現状です。
ノーブランドと大手メーカーの製品比較
ようやく本題の製品比較になります。比較基準としては対応温度ですが、ノーブランド品は限界温度=極限温度とし、あいまいな温度にしている場合(例.快適温度0~10℃)はこのくらいかなというところを勝手に決めています。商品はランキング上位と大手メーカーを比較してみます。ランキング上位の格安品はどれも似たいようなものなので、2つのみ採用しました。
商品名 | 限界温度(℃) | 極限温度(℃) | 重量(g) | 価格(円) | コストパフォーマンス (円/+20℃) | 重量パフォーマンス (g/+20℃) | 国際規格対応 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ホークギア マミー型 -15度耐寒 | 0 | -15 | 1,620 | 4,990 | 249 | 81 | ? |
PYKES PEAK シュラフ マミー 型 1800g | 0 | -10 | 1,800 | 3,980 | 199 | 90 | ? |
BUNDOK マミー型 シュラフ BDK-61 | -5 | 2,400 | 4,800 | 320 | 160 | ? | |
Coleman Extreme WHEATHER Mummy | -5 | -18 | 2,630 | 5,980 | 398 | 175 | ? |
イスカ アルファライト 500X | 0 | 1,000 | 15,400 | 770 | 50 | ×(独自の検査基準) | |
モンベル シームレス バロウバッグ #3 | 0 | 963 | 16,500 | 825 | 48 | 〇 | |
deuterドイター オービット +0℃ | 0 | -14 | 1,400 | 9,889 | 494 | 70 | 〇 |
コストパフォーマンスは対応温度に対しての価格なので、低いほどコスパが良いです。
重量パフォーマンスは対応温度に対しての重量なので、低いほど性能の良い寝袋です。
数値だけ見ると、ノーブランドの格安品がどうしてもよく見えますが、対応温度は国際規格に対応しているとは思えず、性能の保証がありません。キャンプで有名なメーカーであるColemanの寝袋よりもコスパはともかく、重量比も軽いとは考えにくいです。
この中でおすすめの寝袋は?
格安品は値段で飛びつきたくなりますが、やはり信頼性に欠けるため、コスパの良いColemanや、国際規格に対応しており、値段もお手頃なdeuterの寝袋が価格も抑えられておりおすすめです。限界温度が0℃であれば、春~秋のキャンプは対応できるでしょう。ちなみにdeuterはセール価格となっております。
より小さく、軽量を求めるならダウンの寝袋
荷物の持ち運びに不自由しなければ、重いけど安い化繊でよいですが、登山や持ち運びに限りのある場合、軽くて小さくなるダウンの寝袋がおすすめです。ダウンも格安品と大手メーカーを比較してみました。
商品名 | 限界温度(℃) | 極限温度(℃) | フィルパワー | 重量(g) | 価格(円) | コストパフォーマンス (円/+20℃) | 重量パフォーマンス (g/+20℃) | 国際規格対応 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JUYEE ダウン シュラフ -25 | 0 | -25 | ? | 2,700 | 6,749 | 337 | 135 | ? |
QEZER 羽毛量800g | 0 | -10 | 600 | 1,460 | 12,300 | 615 | 73 | ? |
Soomloom マミー型 650FP寝袋 羽毛量800g | 0 | -10 | 650 | 1,300 | 9,655 | 482 | 65 | ? |
ナンガ(NANGA) オーロラライト350DX | 0 | 760 | 750 | 30,690 | 1,534 | 37 | 〇 | |
エアドライト 290 | 2 | 750 | 560 | 29,800 | 1,354 | 25 | ×(独自の検査基準) | |
タケモ(Takemo) スリーピングバッグ 3 | 2 | 750 | 730 | 22,000 | 1,000 | 33 | × | |
モンベル シームレス ダウンハガー800 #3 | -1 | 800 | 555 | 34,100 | 1,794 | 29 | 〇 |
日本の有名メーカーと通販サイト上位にあるダウン寝袋の比較ですが、コスパはやはり格安品です。ただ、ダウンという高級素材をあえて格安品で買うメリットはあまりないんじゃないかと。
ダウンの寝袋の購入を検討するということは、重量や収納性を求めていると思うので、多少値が張っても良い製品を購入することをおすすめします。コストを抑えたいなら化繊の寝袋で十分でしょう。上記の表だとタケモやイスカの寝袋が比較的安価です。ナンガのオーロラライトは生地に防水加工が施されているなど、各寝袋で特徴があるので用途に合った寝袋を買うのが肝心です。
安いにはそれなりの理由がある
格安品を大手メーカーと比較してみましたが、表記の数値を信じるならばコスパは良いということになります。数字に表れないようなところでは、寝袋の中わたの構造や、寝袋内に外の冷気が入らないような作りをしていたり、ジッパーがちゃんとYKKだったりと、使いやすくなっています。その辺りが格安品にはほとんど表記されていないので、大手メーカーとはその差が金額に表れています。
実際私も3,500円で最低使用温度0℃、重量は1.6㎏の寝袋を購入し使ってみましたが、10℃を下回ると寒くて眠れなかった記憶があります。
スリーピングマットは忘れずに!
寝袋の性能が十分であれば眠ることができる。最初はそう思っていましたが、思っていた以上に地面からの冷気は熱を奪います。そのため、寝袋と地面の間にマットが必須となります。スリーピングマットと呼ばれるもので、折り畳み式の物や空気を入れて膨らますものがあり、商品によって断熱性能が違うので、併せて購入を検討しましょう。
キャンプに何回も行く予定がない場合はレンタルも視野
そもそもキャンプを続けていくかどうか分からない場合、購入はもったいないと感じます。その場合はレンタルで済ましてしまうのも手です。下記の商品はイスカのアルファライト700Xで限界温度は-6℃までと、3シーズンに対応しています。また、寝袋の他にコットとマットが付いているので、眠ることに関しての道具はそろっています。一泊で5,500円+送料とそれなりのお値段ですが、指定されたキャンプ場ならば郵送してくれるので、手軽にキャンプへ行きたい場合もおすすめです。
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